第11話 事件後

 山神が目を開くとそこは病室だった。キレイな個室でベッドの横には椅子が並んで置いてあった。誰か居たのだろうか。

「よっ...痛ぇ」

 山神は身体を起こすと痛みに顔を歪めた。

(アイツに蹴られたとこか...。あとはだるいくらいだな)

 だんだんと思考が回復する。そして彼の表情が変わった。

(あいつらは無事なのか?俺がここにいるならあいつらも)

 重い身体を動かそうとした時、誰かが病室に入ってきた。

「おっ、目覚めたか」

 長身で若い男性だ。そして山神は服装を見てすぐにどんな人物なのか理解した。

「魔特の隊長...?」

 警官と同じように魔特には制服がある。そしてその男性には、隊長だけが付けている勲章があったのだ。

「いかにも。と言っても君とは初めましてだね。私は陸園光来りくえんこうらい。対魔術特殊部隊7番隊隊長だ」

 その名前を聞いて山神は驚く。

「陸園光来!?最年少で魔特の隊長になったっていう...。いや、でもなんであなたがここに...」

 光来はベッドの近くまで来ると、椅子に腰掛けて話し始めた。

「ちょっと座らせてもらおう。そうだな...まず一つ、君の友人は無事だ。君が倒れてすぐに私が犯人を確保し、君たちを保護した」

 その言葉に山神はホッと胸をなで下ろす。

「君の勇気のおかげだな。私たちが遅れて君たちを危険に晒してしまったこと、まことに申し訳なかった。そしてもう一つ、今度は聞きたいことなんだが...」



「あの魔術はなんだ?」

 山神の表情が固まる。それは別にマズイことをしてしまったからでも、その時の恐怖を思い出したからでもなかった。単純に何が起きていたのか分からなかったからだ。

「...分かりません。とにかく必死でしたけど」

 光来は大きく息を吐くと、そうかと呟いて天井を見た。

「目撃者が動画を撮っていてあの瞬間を見た。あの盾魔術は普通じゃなかった。大の大人のものですら砕いてきた殺人犯の魔術だ。普通の高校生の君の魔術で弾き飛ばせるわけがない。まして君は高燃費だろう」

 光来は淡々と話し続ける。

「魔術で魔力切れを起こして倒れるなんてことはまず無い。魔術を使えなくなるくらいなものだ。そんな君が奴を止めるなんてな」


「だがそこが面白いと思った」

「......え?何を」

「私はそれを踏まえて勧誘に来たんだ。山神剣次、魔特を目指す気はないか?」

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