第10話 心の...
(もうダメか...)
山神では盾魔術で耐えるのも厳しい。魔力が尽きてやられてしまうだけだった。
ふと山神の頭の中で昔の記憶が蘇った。走馬灯のようなものかもしれない。まだ小学生にもなっていない時のようだった。父親と二人で公園を歩いていた。
「剣次、魔術に必要なものはなんだか分かるか?」
実にたわいのない会話。幼い山神は自信満々といった様子で答える。
「知ってるよ!魔力でしょ?」
父親は優しい表情で頷いた。
「正解だ。じゃあもう一つ。もう一つ大事なものがあるんだよ。どうだ?」
「.........?」
山神は首を傾げる。父親は笑いながら山神の頭を撫でた。
「正解は心なんだ。剣次にはまだ難しいかもしれないな。でも覚えていて欲しい。心は魔力と同じくらいに魔術には必要なことなんだよ。だから父さんは悪いやつ、心の弱いヤツらには負けないさ」
山神はよく分からない様子で頷く。きっと父親も理解できないことは分かっていたのだろう。しかし確かなのは、これだけは伝えたかったことだ。
(心...。そうだった)
通り魔は鉄パイプを振り下ろす。山神は大きく息を吸い込むと盾魔術を作り出した。
「お前なんかにやられるか!」
ぶつかった両者は、ガキンと今までと違う音をたてる。そして鉄パイプは盾魔術に弾かれ、遥か後方まで吹き飛んでいた。無表情に近かった通り魔も驚きを隠せない様子だ。
(弾き飛ばせた?ただこれで相手は丸腰。これなら...)
途方に暮れる通り魔への反撃のチャンスだった。山神は追撃しようと試みたが、その瞬間ガクッと足の力が抜けて座り込んでしまった。
(ま...魔力切れ)
山神は通り魔の攻撃をかいくぐる中で、少しずつ魔術を使っていた。緊張状態にあったこともあり、過剰に魔力を使っていたのだ。山神の視界が狭まる。
「まじ......か...」
目の前の通り魔はまだ身を動かすことはできていなかったが、ここで倒れれば状況は前と変わらなくなる。
そして山神はその場に倒れ込み、意識を失った。
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