第9話 救え!
ガッと鈍い音がした。そこには頭部から血を流す友人の姿...はなかった。とっさに
(あれは...
強化付与も基本的な魔術の一つだ。物質に魔力を送り込むことでその性質を強化することができる。刃物ならより鋭く、通り魔が持つ鉄パイプならより硬くなっていると考えられる。おそらくこのままでは盾魔術も長くはもたない。
山神は大きく息を吸い込むと叫んだ。
「こっちだこのノロマ!」
そして掌に出した風の球を通り魔に向かって投げつける。少し距離があるものの、風の球は通り魔に向かって真っ直ぐに飛んだ。相手のガタイはいいが、当たれば吹き飛ばすことはできる。しかしそれは振り下ろされた鉄パイプで弾かれてしまう。風の球は地面の方に向きを変えると、そのまま衝突して消えてしまった。通り魔が山神を睨みつけ、それからゆっくりと走り出した。完全に標的が山神に移ったようだ。
(よし...とりあえずこいつを引き離せば...)
山神も離れるように走り出し、距離を確認するために振り向いた時だった。通り魔は既に山神の真後ろまで迫っていた。
「なっ!?」
そして鉄パイプで山神を狙う。身を捻ってそれをかわすが、通り魔は鉄パイプを振った反動を使って山神を蹴り飛ばした。これには反応できず、もろに食らってしまう。
「くっ...」
ゴロゴロと転がるが通り魔が再び動き出すのに気づきすぐに立ち上がる。幸い動けないほどのものではなかったようだ。
(まずい...俺よりもかなり素早い。とりあえず離さないと)
通り魔の早さを警戒しつつ山神はまた走り出した。しかし上手い具合回り込まれ、広場から出ることができない。
後ろに下がる山神に何かがぶつかる。
「やま...がみ?」
それは通り魔に襲われていた友人だった。鉄パイプの攻撃をかわしているうちに、友人から離れるどころかすぐ近くに追い詰められていた。通り魔は山神に気づかれないように誘導していたのだ。
そして通り魔はすぐ目の前に迫る。その目は人を殺すのをなんとも思っていないようだった。もう逃げるのは不可能だ。
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