第7話 帰り道

「ご飯までご馳走になっちゃって...。ありがとうございます」

 結局円香は山神の家で晩ご飯まで食べることになっていた。本当は泊まりまで提案されていたが、さすがに断っていた。

「いいのよー。家も二人で寂しいしね。円香ちゃんみたいなお嫁さんが来てくれると嬉しいんだけど...チラッ」

 山神の母親はわざとらしく言ってみせる。円香は苦笑い、山神は頭を抱えていた。


 食事を終えて、円香は帰路に着いていた。隣には母親に送るように言われた山神がいる。

「やっぱりおばさん面白いね」

 彼女は困ったように笑った。しかし少し楽しそうだ。

「面白くはねぇよ...。そういえば明日だよな、おばさん達の」

 笑顔が消える。そしてゆっくりと頷いた。

「うん。五年になるかな」

「明日墓参り行くよ」

「...ありがと」


 円香は過去に両親を亡くしていた。それは悲惨な事件が原因だった。円香の父親は魔特に所属していて、山神の父親と同僚だった。そのこともあり二人は幼い頃から交流を持っていた。月見勇真と山神剣人、二人は魔特や凶悪犯界隈で知らない人はいない程の魔術師だった。月見勇真は膨大な魔力量を持ち、犯罪者を圧倒した。山神剣人は魔術の腕前は魔特では平均だったが、その機転と勇気で多くの相手に立ち向かってきた。

 その二人が七年前に担当した事件。それが二人と山神や円香の運命を変えることとなった。


「おっ、着いた。今日はありがとね、おばさんにもお礼言っておいて」

「おう。またな」

 円香は軽く手を振ると自宅へと入っていった。彼女は両親が亡くなってから、母方の祖父母と暮らしていた。山神は家の外観をぼんやりと眺める。

(...五年か、じゃあ父さんが死んでからは七年になるのか。母さん一人だし早く帰るか)

 山神は自宅の方へと足を進める。

(父さんが今の俺見たらなんて言うのかな。そもそも父さんが生きてたら、俺はまだ夢を叶えるために足掻いてたんだろうか)

 山神は右手に力を入れる。すると掌に野球ボールくらいの風の球が現れた。さらに軽く右手を握るとそれが忍者のクナイのような形になる。

「.........ふぅ」

 ため息と共に力を抜くと、山神の手に入っていた風のクナイは形を崩して消えてしまった。

(これも何回使えるんだか)

 この一般的な魔術を使うにしても人とは違う。その現実が山神にはのしかかっていた。

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