第6話 帰宅エンカウント
放課後になり教室は帰り支度をする生徒達が盛り上がりを見せる。今日は金曜日、しかも月曜日が祝日な事もあり三連休の話題でいっぱいだ。
「おーい山神。明日映画見に行くけど一緒にどう?」
「あー...。まだ体調いまいちだから遠慮しよくよ。悪い」
山神は申し訳なさそうに答える。サボりのことは円香と教師しか気づいていないようだ。もちろん体調が悪いというのは嘘だったが、山神には円香に謝らなければならないという思いが強かった。とりあえず話を終えてさっさと帰宅した彼女を追いかけたかった。
「そっかー。じゃあまたな!」
小走りに帰り道を駆ける。しかし2/3ほどまで来ても円香の姿を見ることはできなかった。もう帰宅してしまったのだろうか。
(メール...いや電話で謝るしかないか?でもそれもなんだかな)
山神はどうすべきかを考えているうちに自宅に着いていた。確か今日は母親の帰宅も早かったはずだ。
「ただいま」
扉を開けると玄関にはちょうど母親がいた。
「おかえり、早いのね。...そうそう、円香ちゃんにたまたま会ってね。あんたの部屋に通しておいたから」
「わかっ......はぁ!?」
山神は予想外の言葉に思わず変な声を出す。その様子に母親も少し驚く。
「どうしたの変な声出して。あっ...もしかしていかがわ」
「いやそれはない!とりあえず円香がいるんですね。飲み物後で取りに来ます!」
余計な疑いまでかけられそうになり、山神は強制的に会話を終わらせる。2階に上がり、部屋のドアを開けると確かに円香が座っていた。
「...お、お邪魔してます」
「いらっしゃい...ませ」
お互いがお互いに悪いと思っていたのだろうか、なんとも微妙な空気が二人の間に流れていた。山神は引きつった顔のままベッドに腰掛ける。
長い沈黙のあと、先に口を開いたのは円香だった。
「ごめんね。ちょうど剣次の家の前通った時におばさん帰ってきたみたいで、呼び止められて強引に...」
話している円香の目は虚ろだ。山神は同情するような表情で頷いている。
「それと...お昼のことも。気持ちを考えてなかった」
その言葉に山神は首を横に振る。
「いや俺も悪かった。それにお前の言ってたことは正しいと思うからさ」
円香はまたも昼間見せたような悲しげな様子を見せるのだった。
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