第5話 少年の夢②

 中学生になって魔術を本格的に学ぶようになった少年は、自分の魔力変換率が他の人とは違うことに気づいた。平凡な同級生と比べても自分の魔力の消耗量では遅れを取らないだけで精一杯。まして優秀な同級生ならば相手にすらならない。しかし少年は夢のために努力を続けた。幸い魔力量は平均より上、センスも無いわけではなかった。勉強はもちろん、効率の良い魔力の使い方や技術を自ら探した。高燃費で魔特に入ることができた人の話を聞いたことはなかった。それでもそんなことでは諦めなかった。諦めきれなかっただけかもしれない。

 中学二年生で高校受験を考え出す頃、少年は都立第一高校を希望した。学力では問題がなく、それが彼が魔特に入る最善の選択だったからだ。ある日、都立第二高校を目指す生徒達が集まって自主練をする姿を目撃した。魔術の質・火力、そして連続で強力な魔術を使う姿、少年が目を向けないようにしていた姿だった。遠目からでも分かる魔力を持つ者、その中の一人の少女が放った魔術を見た瞬間、少年は悟ってしまった。自分では本当に相手にならないのだと。この才能の差は努力で埋めることはできないのだと。少年は手に持っていた参考書を落とし、それを拾い直すことはなかった。

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