第3話 平凡なら
山神剣次と
「それは...やってみないと分からないよ。高燃費でも普通に魔術が使えるようになるかもしれないし」
円香は必死に訴えるような口調で言った。
魔術を使うのには大事な要素が三つ存在する。魔力量・魔力変換率・技術である。魔力量はその名の通り、自分が体内に許容できる魔力の量のことである。当然この量が多いほど魔術を多く使うことができる。魔力変換率は、自分の魔力を魔術に変換する効率のことである。これが高ければ少しの魔力で強力な魔術を使うことができる。そして技術によって、使用できる魔術の幅が決まる。
このうち魔力量と技術に関しては努力で補うことが可能だ。厳密に言うと魔力量を大きく増やすことは難しいが、外から供給する手段を用意することはできる。しかし魔力変換率だけはどうすることもできない、いわば魔術での一番の才能となる部分だった。そして高燃費とは燃費が悪いということを意味するもの、つまり魔力変換率が特に低い人を指す言葉だった。
山神剣次もその一人。彼は一般の人と比べると同じ魔術を使用するのに三倍程の魔力が必要だった。
「できるとかできないとかお前には分からないだろ」
山神の言葉に円香は黙り込んでしまう。そして数十秒の沈黙が続いた。
「...ごめん。先戻ってるね。剣次も次の授業はちゃんと受けるんだよ!」
沈黙のあと先に口を開いたのは円香だった。彼女は顔を上げて少し笑顔を見せ、語尾を強めて言った。この微妙な空気をどうにかしたかったのだろう。そして回れ右して校舎へと戻っていった。その様子を見て剣次はまたため息をついた。
(...やっちまったな。あとで謝らないと)
山神は空を仰ぐと、立ち上がって校舎へと向かった。
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