窓からは

「ここで待っていなさい」

 と言われて、だから待っていた。

 ベンチに座って、視線の先にある窓を眺めていた。

 窓からは、庭が見えた。動くものはなかった。木とか、草とか、建物とかしかなかった。人も通らない。車窓のように流れることもない。風も吹かない。でも私は窓を眺め続けた。

 何分、経ったのか気になった。

 時計を探して、首を動かしたら、妙な痛みがあった。同じ姿勢でずっといたから、凝ったのかもしれない。

 左側の壁に、丸い時計がかかっていた。

 でも私は目が悪いので、針が何時を指しているのかが判らなかった。

 立ち上がって見に行こうかとも思ったけれど、なんとなくベンチから動いちゃいけない気がした。

 そもそも何時から待っているのかが判らないから、今の時刻を知った処で、何分経ったのかは判らない、と気付いた。

 私は窓に視線を戻した。

 窓からは、庭が見えた。

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