どんな子供でも

「あなたってどんな子供でした?」

 弓形さんは、なんの脈絡もなくそう訊ねてきた。僕は「どんな……?」と言葉を鸚鵡返しにし、頭を回さずに、ただ、首を傾げる。弓形さんは質問の形を変えた。

「中学生くらいの時は、どんな風に振舞っていましたか?」

「さぁ。普通ですよ。優等生でもなく、不良でもなく」僕は事実を述べた。

「部活は?」

「はぁ」

 僕は視線をゆるやかに逸らした。なんか、この人、逃がしてくれない。答えなければいけないようだ。僕は三秒ほどかけて、言葉を作る。

「実は演劇部に入っていたんですよ。主役にはなれませんでしたけどね、脇役ばっかりってわけでもなく、割と目立つ役もやったんですよ」

「へぇ」弓形さんは目を丸くした。「すごいねぇ。まぁ、言われてみるとあなたって発音がしっかりしているよね。そうか、演劇部に入っていたんだ」

「嘘ですよ」

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