幽霊なんか出なくったって

 柿紙は、学校に懐中電灯を持って登校していた。学校で使うわけではない。彼の家の近くの道は、街灯がめちゃくちゃに少なく、というかほとんどなく、日が暮れると真っ暗になってしまうのだ。下校するには、灯りがいる。

 柿紙は、その暗い暗い道が、本当に嫌いだった。幽霊なんか出なくったって、ただ暗いだけでこんなにも怖い。なにかにぶつかりそうで。いつの間にか知らない処にいそうで。急に足元が抜け落ちて、どこかに転げ落ちそうで。常に、首筋に、ひんやりとした刃物を突きつけられているみたいだった。柿紙はいつも、早足で家に帰った。走るのはちょっと恥ずかしいから、早足で。

 懐中電灯で、ユラユラと前を照らしながら、気休めに口笛を吹きながら、歩く。ホラーゲームじゃねえんだぞ、と柿紙はひとりごちて、一人で笑う。

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