そんな割れたペンダントで

 引き出しから見覚えのない、ペンダントが出てきた。鈍い金色の鎖は錆びていたし、飾りの石にはひびが入っていた。みすぼらしいと言えばみすぼらしいけれど、味があると言えば味がある。アンティーク、とか、呼べばいいのだろうか。

「あっ、ペンダントだ!」

 矢庭に、なにかがぶつかってきた。まったく油断していた僕は、もろにダメージを食らって、あわや転びかける。勢いでペンダントが飛んだ。

「よっと」

 体当たりをしてきた子が、リラが、上手にペンダントをキャッチした。指に鎖を引っ掛けて垂らし、ペンダントをじっと観察する。

「きれい。ねぇ、これ頂戴」

「僕のじゃないし」

「じゃあリラのね!」

 リラは嬉しそうに、さっそくそれを首元につけた。飾りの位置を微調整して、何故か髪を軽くとかしてから、リラは僕に向き直る。

「どう? 似合う?」

「似合わなくはないけど」僕は苦笑する。「いいのか? そんな割れたペンダントで」

「でも、きれいよ」

 リラは石を指先でつまんで、俯いて眺めた。カフェラテを丸く固めたみたいな、柔らかいブラウンの石。リラの髪の毛はそれより少し淡い、琥珀色。僕が石からリラの顔に目線を移した瞬間、リラもぱっと顔をあげて、微笑んだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る