砂上のあなた

薄茶混じりの白い砂

灰色の空と重たそうな雲

ヒュウヒュウと耳に絡みつく風

わたしの心の世界


何もないわけではない

色も音もある

止まっているわけでもない

風は吹き、砂をさらう


だけどこんなの、なんの意味もない

だってあなたがいないもの

あなたは散った

散ってしまった


なにかに触れたくなって砂を指でなぞった

行くあてのない軌跡があなたを描いた

一筆足したらあなたが笑った

心がこぼれて砂を染めた


砂上の楼閣であなたと暮らす

まるくなぞれば月明かり

淡く優しくあの日のように照らしてくれる

太陽に背を向けわたしは俯く


私の手を引いていく誰かの手

日の光の下に私を連れ出していく

一足一足引かれてゆくたび

わたしの身体は重くなる


顔をあげてとささやく声

いまを生きろと告げる人

だれかの優しさが心にしみるたび

血よりも苦い味がした


わたしはきっと生きるでしょう

煩わしさに心を握り潰されるまでは

大きな力にこの身体がひしゃげられる日までは

その日をひとり待ちながらわたしはきっと生きるでしょう

だからお願い

その日が来たら

わたしのことを迎えに来て

あなたにだけは会いたいの


幻でもいい

気の迷いでも構わない

あなたがそばにいると思えたなら

もう二度と目覚めなくてもいい

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