詩人へ

詩人へ


まったく最悪だよ

君らときたら綺麗な言葉を並べたてるばかりじゃないか

そんなものいくら作ったって世の中は良くならないし

お腹だって膨れやしない

そんなのぜんぜん役に立たない

まったく最悪だよ

君らのさえずりはお菓子と一緒さ

甘いばかりで僕らを弱くする

涙のわけを知っててどうなるの

それが誰かのものならなおさらさ

まったく最悪だよ

世間てヤツは薄汚いし将来なんて真暗さ

僕は愚図でノロマで弱虫で周りの人は知らん顔

なのに君らはこつこつこつこつこつこつと

言葉の塔を積み上げる

まったく最悪だよ

高い場所からワケ知り顔で

君らは世界と命の賛歌をもたらせる

塔の影に隠れてしまった

僕の顔など見えちゃいない

まったく最悪だよ

僕の言葉はガラクタか

僕の声はなまくらか

重ねても重ねても重ねても

伝わる感触なんてどこにもない

まったく最悪だよ

文字をなぞって僕は気付いた

心の在処と痛みの形に

声で結んで僕は感じた

自分の鼓動と誰かの鼓動

まったく最悪だよ

探し物は握った拳が隠していた

望みの在処は僕と誰かの真ん中くらい

誰かの事を知らない僕は

誰より僕をわかっていなかった

詩は僕の心に触れていった

雨風あめかぜが身体をそっとなぞってゆくように

見上げると言葉の塔の住人と目が合った

なんだ

君もただの人じゃないか

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