僕の話

僕-白石 優-は、

颯に会うまでいつも一人だった。


なんでか…は、俺にもよくわからない。


ただ一人僕は、

クラスの端で本を読んでいた。



別に寂しくもなかったし、

辛くもなかった。


中学2年の時、

僕のクラスに颯がやってきた。

もう何もかも諦めたような顔で

クラスのみんなに挨拶をしている姿を見て

颯の本心が気になり、近づいた。


「ねぇ!黒峰くん!どこからきたの?」

「…神奈川から…。」

「神奈川のどこ?海近いの?」

「内陸部だから海は近くないよ、

というか、声大きい…、

席隣なんだから

そんな大きくなくても聞こえる……」

「そうだよね、ごめん…」

「あ、いや、…そんな落ち込むな、

別に怒ってねぇ…」

「そっか…、ねぇ、今日、遊ぼうよ!」

「…いいよ…」


俺のことをうざがっていたものの、

なんだかんだつるんで言った。

そして色々過去の話もしてくれた。


そんなかで出てきた饅頭を

わざと持ってって、颯をからかったりもしたっけ。


…懐かしいな…、



まあ、そんなこともありながら、

僕らは中学3年になった。


その頃から、颯に目をつけた輩が

いじめようと近づいて来る。

それを絶対に颯に近づけまいと、

俺がかばい虐められてきた。

カツアゲ、暴行、物の紛失…

色んなことをされたけど

全部颯にはバレないように、

颯の前では普通を装っていた。


高校に上がるとまた新たな人-主に先輩-が

愛想のよくない颯をよくは思わず近づいてきた…。

だから、また、僕が庇っていじめられた…。





そして最悪なことが起こる。


高校1年の冬、タガが外れた先輩たちが

ナイフを持ち出し、脅してきたのだ。



万引きをしてこいと。


僕は嫌だと断った。


そう言った瞬間に逆上した先輩が

ナイフの刃をこちらに向け、

向かってきた。


刺される直前に颯がきて、


「優…!」


そんな声がきこえた。


聞こえた時には

二本のナイフが、

腹に刺さった感覚があった。

颯が膝から崩れ落ちたのを横目にみて

情けないなと思いつつ、

意識を失った。



僕は虐められたことに対して後悔なんて

していない。



だから目覚められないのではなくて、

颯に1番情けない瞬間を見れたのが

恥ずかしく、そしてそれを自分のせいだと

後悔する颯の姿を見たくなくて、

目覚められなかった。

ただそれだけなんだ。

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