暗闇と優

うずくまってるあいつをみながら

立ち尽くしてもう相当経つだろう。

暗闇の中、あいつに気づかれるのが怖くて

スマホも見られなくて、

だから時間感覚がない。



そっと足音を消して決死の覚悟で

一歩を踏み出す。

気づかれてない。

もう一歩、二歩、三歩近づき

後一歩であいつの隣に行けるというところで

目線だけこちらに向け


「だれ…」


と呟いた。


「黒峰 はやて。」


「なんで、ここにいるの…、

俺の何を知ってる…?」


まるで普段は明るいあいつがまるで

別人のように暗くトーンも低かった。

一人称は俺になっているし…。

たぶんこれがあいつの本性なんだ。

下手な態度で荒ぶらせたりなんてしたら

ただじゃ済まないし、たぶん、起き上がってこないだろう。

ここは慎重に…


「…たぶん、の事は、

たくさん知ってるが、の事は、何も知らないだろうな…。


…自分の名前は、わかるか。」


無論、自分で思い出すまで言わないつもりだ。

あいつに安易に教えたらアラームがなる事は目に見えてるし

そんなことを

考えなしなまま続けたりしたら



俺もあいつも、本当の世界に戻れなくなる…



そんな気がする。

それに今のあいつの状態で

俺のスマホのアラームが鳴り響けば

俺の信用は一気に崩れ

警戒心丸出しのまま、

あいつを本当の世界に戻す事はできないだろう。


だからここは慎重にいく。



「わからない…。ずっと、わかんないまま…

暗闇にいる……」




「そっか…どうするか…」

「……、はやてのはなし、して。」

「え?」

「君の過去を聞いてみたい…」





…俺の過去なんて大した事はないのにな。



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