暗い道と明るい道。

俺は重い体を持ち上げ、歩き始めた。

周りは暗くてないも見えない。

自分が今どこを歩いているのかすら

わからない。

地面も弾力があり、気をぬくと足を取られ

挫きそうになる。


そんな道を長いこと歩いていると、

急に遠くに光が見えた。

雰囲気は今いるところとあまりに違っていて

驚いた。

さらに驚いたのは、その道に入ると、

いきなりあいつの自己嫌悪や懺悔、怯えているような言葉が一気に聞こえてきた。

それは明るい部屋にはそぐわなすぎた。





”こわい…こわい…こわい…”

”俺がもっと強ければ…”

”守ってやれなくてごめん…”

”なんで俺は…1番仲良いやつに本当の姿を見せられないんだろ…”

”俺が弱いから…”

”あの時どうするのが正解だったの?

ねぇ…誰か教えてよ…”






そんな言葉に辛くなりながらも

決して目を背けることはせず、

受け止めながら、噛み締めながら進んだ。





だんだんとあいつに近づいているのか、

懺悔などの暗い言葉も重みが増し、

音量も大きくなっていく。

死にたい、死にたかった。

俺が生きてる価値があるの?

俺は……俺は1番大切な友達を

傷つけた。


そんな言葉が俺の肩に重くのしかかる。



俺は何にも気づいてやれなかった。

悪いのは俺なのに、なんで自分を責める?

責めるなら俺を責めろよ…



そんな相手にとって無責任極まりない言葉が

胸の中をグルグルグルグル回る。




正直こわい。

あいつに会うのは。

此処に潜り込んでから

今まであってきた言葉は

ずっと笑顔のあいつには

似合わない言葉ばかりだったから。

でも…そんなくだらない理由で逃げてたら、

俺はいつまでも成長しないから…







思考を巡らせていた間にいつの間にか

着いていたドアのドアノブをまわした。





ドアには鍵はかかってなかった。



「入るぞ…」

そう言いながら心の部屋の中にはいる。

少し歩みを進めると、あいつが見えてきた。

部屋の隅で体育座りでうつむき怯えているあいつは、まるで今まで飼い主から

愛されていたのに理不尽な理由から

捨てられた飼い犬みたいな…

そんな暗い空気が部屋に充満していた。

そんな空気に俺は言葉が出ず

立ち尽くしてしまった。


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