第2話 友達は透明人間

 これは僕が覚えていない程小さな頃から始まる話です。


 積木やラッパ等簡単な玩具で遊べるようになった僕には早速友達ができました。でもそれは母には見えない友達でした。母が楽しそうに誰かと遊ぶ僕に

 「誰と遊んでいるの?」

 と訊くと、僕は

 「透明人間!」

 と答えたそうです。

 当時いくら怒っても散らかした玩具を片付けない僕は叱られる度に

 「僕じゃない、やったのは透明人間だもん!」

 と訴えていたらしいのですが、母は当時幼児向け番組でリピートされていた透明人間の歌に影響されているのだろうと相手にしなかったそうです。


 それから月日が経ち、僕が小学生の頃の事です。その頃の僕はもう”自分には見えるけれども他の人には見えない人がいる”事を認識していました。そしてそれを人に言ってはいけないことも。だからずっと誰にも言わずにいました。

 しかしある日、父が夕食の時にこんな事を言い出しました。

 「この家、ずっと女の子がいるよな」

 すると兄が続けて

 「それって長い髪の?」

 と言い出します。なので僕も思い切って言いました。

 「白いワンピースを着た子だよね?」

 3人で無言のまま目を合わせました。父と兄と僕は同じ少女をはっきりと見ていたのです。

 いつからそう見えていたのかは覚えていないのですが、いつも僕の傍には女の子がいました。小学生になって話すことは無くなりましたが、目を合わせると笑ってくれて、僕も笑い返していました。複雑な事情の只中にいた僕は同級生や教師とうまくいかず度々癇癪を起こす問題児で、喧嘩が強くなかったらイジメのターゲット間違いなしの存在でした。というより何かされるとその瞬間に暴力でやり返していたので遠巻きにされていました。そんな中”他の人には見えない女の子”はいつもランドセルを置く背の低いロッカーの上に座っていて、僕が落ち込んだり辛い時に見つめるとニコッと笑ってくれるのです。まるで

 「大丈夫だよ」

 と言ってくれているみたいに。


 今はその女の子を見ることはできませんが、存在はずっと感じています。彼女が幼少時代の透明人間と同じ存在かは分かりません。ですが透明人間の友達や彼女のお陰で今も霊に親近感を持って接することができるのは間違いのない事実です。

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