100%実体験~生まれも育ちも曰く付き物件~

ビス

第1話 【序章】曰く付き物件

 さて、世の中には『事故物件』という物が多く存在します。それはその家屋で事件や事故等があって実際に住人が不幸に見舞われた物件の事です。

 僕が生まれ育った家はそういった事故物件ではありません。言うなれば『曰く付き物件』です。


 此処に住んでいた時に起こった事を話す前に、簡単に曰く付きとする理由を説明しておこうと思います。

 直近だとその土地には近所にある祭場の倉庫が建っていました。葬儀で扱う諸々をしまっていたのだと思います。その土地を祖父が買い取って建てたビルに両親と兄弟の4人で住んでいました。

 更に時代を遡るとそこは元々川でした。戦時中遺体を捨てる場所として使われていたそうです。

 家のベランダから見える十字路は見通しも良く幅も広く、また通行量もそれほど多くないのに頻繁に事故が起こっていました。標識が立てられたり光る看板が設置されたりもしましたが、効果はありませんでした。


 インターネットを使ったチャットが流行っていた頃、1人のアマチュア霊媒師に出会いました。元はプロだったのですがあまりに割に合わないという理由で友人や知人の相談にしか乗らなくなったそうです。彼が試しに来てくれる事になったのですが、約束の時間を大分過ぎた頃に電話がかかってきました。

 「カーナビに住所を入れて指示に従っているんだけど辿り着けない」

 ビルの傍には郵便ポストがあるしそこそこ大きな通りに面しているし、何より僕がビルの前に立って待っているので通り過ぎて分からない筈もありません。仕方なく彼には周辺で停まれる場所を探して待っていてもらい迎えに行きました。

 そして漸くビルの前に着いた時、彼が一言呟きました。

 「俺にはどうすることも出来ない。そもそも此処は生きている人間が住む場所じゃない」


 詳しい間取りは説明出来ませんが(すぐに特定出来る特異な間取りなので)玄関・トイレ・風呂場・キッチンといった水回りは全て鬼門にあります。父が友人に設計してもらったのですがその友人の詳細は終ぞ知らされる事はありませんでした。


 これからお話するのはそんな”事件も事故も起きてはいないが元霊媒師が匙を投げた家”---『曰く付き物件』で遭遇した出来事です。

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