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(仰々しいBGM)
店長 フハハハ ハーッハッハッハ!
佐竹 うわーっ でたーっ!
匠 なんだ なんだこいつ!ミイラ男か!
佐竹 あーっ 店長だーっ 店長の全身に タオルが巻き付いてるーっ!
店長 丁寧な情景描写をありがとう フハハハハ 私は妖怪2mタオル この男の体は 私が完全に乗っ取った
匠 なんだ なんなんだこの状況は
店長 おい そこの木刀を持った若造
匠 あ?
店長 上空から見ていたぞ 貴様 私を退治しに来たそうだな 私に倒されるために今治までやってくるとは 愚かなる男よ
匠 ……恥ずかしくないのか お前
店長 何を言っている 私は誇り高き 妖怪2mタオルなのだ フハハハハ
良太 おい大ちゃん!なんか戦ってるぞ!
大輔 うわ本当だーっ みんな来いよーっ
子供たち えーっ なになにー?
(数組の親子連れのざわめき)
匠 くっ……囲まれた……
店長 さあ もう逃げ場はないぞ妖怪ハンターよ
匠 人を集めてどうするつもりだ
店長 この期に及んで見苦しい振舞いはしないとは思うが 念のため 保険を掛けさせてもらった あちらを見ろ!
佐竹 よ 妖怪ハンターさん すみません 捕まってしまいましたー
匠 店員……てか 親父!?
光昭 匠……
店長 あの二人は私の人質だ 貴様が逃げ出せば あの二人の首元に巻いたタオルが締めつけ とても苦しい思いをさせてやるぞ フハハハハ
佐竹 妖怪ハンターさん 大丈夫です このタオル いまはまだフワフワして温かいだけです!存分に戦って下さい!
匠 やめてくれ お膳立てをするな!
佐竹 さあみんな 妖怪ハンターを応援しよう!「がんばれ妖怪ハンター!」って言ってあげようね!せーの!
観客 がんばれ!妖怪ハンター!
匠 う ううー
店長 さあ 妖怪ハンターよ 覚悟を決めてこの私 2mタオルと勝負しろ!
匠 てめえ どうなっても知らねえぞ
店長 貴様のごときタダのニートに 負ける私ではないわ フハハハハ
匠 畜生 ちくしょう うおーっ!
(竹刀が風をきる音)
店長 おっと!
匠 うわーっ!
(匠の気合→竹刀が風を斬る音→店長が軽くかわす声 が数度続く)
佐竹 計画通りですね さすが店長 人をあおるのがほんとに上手い
光昭 あのう 店長さんは大丈夫でしょうか 息子は竹刀を持ってるんですよ
佐竹 ああ 大丈夫です あの人ね ああ見えてめっちゃケンカ強いんですよ
店長 ふんっ!
(濡れタオルが匠の顔をひっぱたく音)
匠 ぐっ…(悶絶して)つーーッ……
店長 ふはは 思い知ったか これが濡れタオルの威力だ!
匠 地味に痛い……
店長 おいおい かかってこい若いの
匠 (痛みをこらえながら)こいつ……
佐竹 店長 むかしボクサーだったんですって けっこういいところまで行ってたらしいですよ 本当かどうか分かりませんけど
光昭 し しかし もしものことがあったら
佐竹 大丈夫ですって それより心配なのは匠君のほうですよ
匠 はーっ はーっ
店長 どうした妖怪ハンター ずいぶんしんどそうじゃないか
匠 うるさい……
店長 情報収集などと抜かして部屋に引き籠っていたから 体力が無くなるんだ 残念だったな
匠 な なんで知ってる
店長 きちんと就職しておけばこんな目にもあわなかっただろうに 哀れな男よ フハハハハ
匠 うるさい うるさーい!
店長 はぁっ!
(竹刀が落ちる音)
店長 ……秘儀『タオル白羽取り』
大輔 すげえ タオルで刀を弾き飛ばした!
店長 今治のタオルの弾力があって はじめて成せる技だ
観客 おー
(拍手)
匠 ……なんだよ なんだよ みんなしてバカにしやがって なんなんだよ
店長 どうした もう終わりか え?もう終わりかよ 妖怪ハンターさんよ
匠 うるせえ黙れ知らねえよ 何が妖怪ハンターだよ 畜生 ふざけんなよ
店長 いや まんまこっちの台詞だけど
匠 お前らに何が分かんだよ クソが 消えろよ どうでもいいよもう全部
光昭 匠……
匠 笑えよ餓鬼ども 結局何もできねえよ俺は ちくしょう ちくしょう
光昭 匠!
匠 ……父さん
光昭 おまえ 何してんだ!
匠 ごめんなさい ……俺 もうダメだ
光昭 そこに妖怪がいるんだぞ!
匠 ……は?
光昭 そいつ!妖怪なんだろ! お前がやっと見つけた お前の敵なんだろ! お前がやっつけるんだよ お前にしか倒せないんだよ!がんばれ!匠!
佐竹 そうだよ妖怪ハンター いや 匠くん 君ならできる!やっつけろ!
大輔 がんばれ妖怪ハンター!
良太 がんばれー!
観客 がんばれー!がんばれー!
匠 なんだよ……なんなんだ 畜生
店長 ふん 無様なものだな妖怪ハンターよ 見ず知らずの他人ですら こんなにもお前を応援しているぞ ましてや(感動で声が裏返る)お父さんが どんな思いでお前の ぐすっ 戦いを観ていたか お前に おっ うーっ(泣く)
大輔 2mタオルが泣いてる!隙だらけだ!
佐竹 いまだ匠くん!
光昭 やっつけろ!
匠 ありがとうみんな ありがとう父さん!うおーっ!
(鈍い音)
(一拍遅れて 店長が地面に倒れる音)
佐竹 店長――――ッ!!
匠 や やった
佐竹 竹刀が!竹刀がコメカミにクリーンヒットした今!店長!大丈夫ですか!
店長 た 大したものだな妖怪ハンター この2mタオルに ここまで深手を負わせるとは しかし忘れるな 妖怪2mタオルはいつだって蘇るのだ この世に拭うべき 湿り気があるかぎり フハハハハ!ハハハハ!
(走り去る足音)
佐竹 店長どこ行くんですか!まっすぐ走れてませんよ!店長―!
(走り去る足音)
匠 ……追っかけるべきなのかな
光昭 匠
匠 あ 父さん なんで来たの
光昭 ああ 手紙見てな 追ってきた
匠 ……あの ごめん
光昭 勝ったな 妖怪に お前すごいな よくやったよ
匠 ……ありがとう
(拍手の音)
光昭 ああ皆さん ありがとうございます ほら匠 みなさんにご挨拶しよう
匠 あ ありがとうございます 握手?いや おれ そういうのじゃないので……ええ……
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