【ホテルの一室】


(水道を捻る音)

(洗面台から水が出る音)


匠 (自分に囁く)俺は妖怪ハンター……妖怪は存在する……俺は妖怪を倒すもの……しゃかいふてきごーしゃなんかじゃない……俺は妖怪ハンター……実家は継がない……俺は……俺は……


(携帯電話の着信音)

(水道の音 止まる)


匠  もしもし(咳払いして声をつくる)もしもし

佐竹 ああっ!妖怪ハンターさん!

匠  そうだ 前島だ 君は?

佐竹 昨日お会いしたタオル屋の店員です!大変なんです!店長が!店長が妖怪にさらわれました!

匠  えっ!な 何?

佐竹 急いで店まで来てください!あなたしか頼れる方がいないんです!

匠  あっ えっ?俺が行くの?

佐竹 えっ あなた 妖怪ハンターさんですよね?

匠  ……(声を作って)そうだ

佐竹 ありがとうございます!お待ちしてます!すぐに来てください!

匠  わかった まかせておけ!


(電話を切る音)


匠  何が起こってるんだ?


【公園の森の中】


店長 よし あとは頭だな…… 前島さん 後ろ 留めてもらえますか

光昭 あ はい……

店長 すみませんね 手伝わせちゃって

光昭 あ いえ こちらこそ お手数をおかけしてしまって 佐竹さんにも

店長 いいんですよ 勝手にやってることですよ 好きなんです俺も佐竹も こういうごっこ遊モファっ(タオルが口に食い込む)んー んーーー!

光昭 あ!すみません!

店長 タオルが口に食い込みました これ 気をつけないとな……視界も悪いし

光昭 店長さん ほんと すみません

店長 いえいえ それよりお父さん 打ち合わせ通り 合図出すまで隠れといてくださいね お願いしますよ


【公園】


佐竹 ここです この公園です!

匠  ああ まず店長が連れ去られたときの状況を詳しく説明してくれ

佐竹 はい 今朝 僕と店長が二人で公園を散歩してたんですね

匠  平日の朝から男二人で?

佐竹 あ いや たまたま二人とも趣味が散歩なんですよ そ そしたら突然 タオルが飛んできて 店長の顔に巻き付いたんです!

匠  ふーぅむ……

佐竹 必死に助けようとしたんですが タオルは店長を巻き込んで そのまま飛んで行ってしまいました 間違いなく妖怪です!妖怪ハンターさん 店長を助けてください!

匠  ……本当か その話

佐竹 そんな!疑うんですか!

匠  いやだって 朝っぱらから襲ってくる妖怪なんかいるか?

佐竹 この公園は妖怪のねぐらなんですよ!

匠  こんなにたくさんの親子連れでにぎわう公園がか?

佐竹 そうですよ なんなら子供たちに聞いてみましょうよ あ そこの君!

大輔 こんにちは!

佐竹 こんにちは ねえ この辺で妖怪をみなかった?

大輔 うん!ぼく見たよ!

佐竹 どんな妖怪だった?

大輔 とーっても優しい妖怪だったよ!

佐竹 見ましたか あの子 あんなに怯えて

匠  どこがだ 元気いっぱいだったぞ

佐竹 とにかく早く店長を助けてください!

匠  ……いや その

佐竹 いま頼りになるのはあなただけなんです お願いします

匠  えーと そのう まずは警察とかに頼んだほうが いいんじゃないか

佐竹 こんな話 警察はとりあってくれませんよ 早く店長を見つけてください

匠  見つけてと言われても……

店長 (悪魔のような声で)その必要はなぁーい!!

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