店長 ……きましたよ 息子さん

光昭 本当ですか!

店長 ええ 妖怪退治に

光昭 申し訳ございません!息子が ご迷惑をおかけしてしまって

店長 いやそんなに頭を下げないでください 迷惑らしい迷惑は受けてませんから

光昭 このとおり 申し訳ございません

佐竹 店先で謝罪されつづけるほうが迷惑なんですけど

光昭 ああ すみません!

店長 いやだからそれ

光昭 息子はどこへ行きましたか

店長 ああ このあたりで聞き込みをしてみようって言ってましたよ

光昭 まったくあれは 人様に迷惑ばかりかけて ああ

佐竹 そのう 実はですね 息子さんが追いかけてる妖怪というのはですね 実は

光昭 ええ 知っております 2mタオルですよね

店長 おっ ご存知でしたか!

佐竹 なに喜んでるんですか

光昭 こちらのお店が受けた取材の映像を動画サイトで観ました 町の方のブログも読みました 実に面白い試みだと思いました

店長 ありがとうございます 私も自信があったんですよ

佐竹 そのせいでこんなややこしいことになってるんですけどね

光昭・店長 ごめんなさい

佐竹 ……息子さんは 妖怪の存在をガッツリ信じてるんですね

光昭 信じております いや 正確には 信じようとしております

店長 信じようとしている?

佐竹 どういうことですか

光昭 あれは就職活動に失敗してから すっかりおかしくなってしまいました

自分にしかできないことをするんだと 口では言いながらずっと成果を上げられずにおりました そんなある日 突然 今日から妖怪ハンターになると宣言しおったんです

店長 それはまた 随分思い切った就職先ですね 儲かるんですか

佐竹 そんな就職先ないでしょう

光昭 それから息子は 就職活動も全部やめて 一日中 パソコンにかじりつくようになってしまいました

佐竹 それって 引きこもりってことですか

光昭 いえ 本人は精神統一と情報収集だと言っておりました

店長 斬新な言い訳だなあ

光昭 そんな生活が半年近く続きまして 見るに見かねて私 ついに説教をしたのです 何が妖怪ハンターだ タダの穀つぶしが 実績もないくせに偉そうにするな あらんかぎりの罵詈雑言を浴びせました 息子は 匠は ただ黙って震えておりました そうしましたら翌日 置手紙を残して出ていきおったのです これがその手紙です

佐竹 「ついに今治に妖怪が現れた 倒すまで帰らない 匠 (妖怪ハンター)」

店長 ヤケクソみてえな手紙だな

光昭 息子が人様に迷惑をかけてはならんと取るものもとらず こちらまでやってまいりました あれはもう 自分でも訳がわからなくなってるんです 引っ込みがつかなくなっているんです この世には妖怪がいて自分はそれを退治する そういう仕事をするんだと 必死で思い込もうとしておるのです

佐竹 変な意味で 妖怪に取りつかれてるんですね

店長 めんどくせえなー

佐竹 いや 収まってる場合じゃないですよ めちゃくちゃ危険人物じゃないですか どうするんですいきなり適当な人に因縁つけて 妖怪だとか言って あの木刀で殴りかかったら大変なことになりますよ

店長 佐竹!親の前だぞ

佐竹 ……すみません

光昭 ……もし 妖怪がいるとすれば

(次第に涙声になる) いまの匠がそうです 私はいったい どうすればいいのか

店長 前島さん……

佐竹 店長 とりあえず前島さんの息子さん 匠さんでしたっけ 探しにいきませんか もともとは2mタオルが原因だし

店長 いや 待てよ佐竹 これチャンスだよ

佐竹 チャンス?

店長 事情はともかく 2mタオルに宿敵が現れたんだぞ ライバル登場だよ 2mタオルを盛り上げる またとないチャンスだろうが

佐竹 店長 まだそんなこと言ってるんですか 悪ふざけやってる場合じゃないでしょうが

店長 だから さらに上をいく悪ふざけをみせてやろうって言ってんだ 上等じゃねえか 人助け妖怪2mタオルの本領発揮だよ!

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