第5話
「おいおい、なんだよこりゃ」
「まあまあいいじゃん」
いつもの朝。いつもの登校。いつもの光景...今日はそれと程遠い物だった。
鯖那智の横に透、その横には千聖、真矢、後ろの電柱のところに花音が一緒に登校していたのだ。
てか、花音さんまだあんな状態なのかよ。
こっちへ来れば?と目でおくるが花音は首を横に振る。どうやらまだ馴染んでいない様子。まあ当たり前か。
「(なんでこうなったんだよ)」
おいそこ、イチャイチャしない。
「(いやーさぁ、昨日の夜に...)」
-時は遡り、前日の夜-
『でね、一つお願いがあるんだけど...』
「ん、どしたー?」
透は千聖と電話で話していた。
『真矢がね、透くんたちともっと話したいらしいんだよね。だから明日から一緒に登校できないかな?』
「おれはいいけどー。サブはどうかなー」
『鯖那智くんには内緒にしてほしいって真矢が言ってた』
「そっか。うん、いいよ」
『ほんと!?ありがとう!』
「どいたま。てかね、サブの野郎が...」
「(てわけなんだよー)」
「(てわけなんだよー、じゃねーよ。いきなりだとびびるわ)」
ほら、イチャイチャするじゃん?するじゃん?ねっ?
「(ごめんよ、おれもいきなりだったから)」
「(う...ま、まあいいけど。花音さんは?どしたんだよ)」
「(風さんはおれは本当に知らない。千聖たちと仲良くなりたいじゃないかな。千聖たちは気付いてないだろうけど)」
「(そうか)」
まあ、あの人ならすぐ打ち解けるだろう。結構可愛いし。ていうかうちの1年生ルックスのレベルが高くないか?少女漫画とかラノベみたいだな。現に今、めっちゃ注目浴びてるし。(1年男子ランク1位、?位、女子ランク1位〜3位2人健在、?位が後ろ)
「(まあすぐ慣れるでしょ)」
「(そうだな)」
「さっきから2人でなに話してるのー?」
「ん、まあいろいろ」
「ふーん。鯖那智くんごめんね。いきなり」
「いえ、全然」
これから早起きして髪整えなきゃなー。
昼休みに入り、弁当を広げようとしたところ、
『1年3組の日暮鯖那智くん、至急生徒会室に来てください。日暮鯖那智くん、至急生徒会室に来てください』
え?生徒会室?なんかしたっけおれ。
「えー、サブお呼び出しかよ」
「うん、行ってくるわ」
なんで彼女さんいんのよ。あーおまえこれ。おれの席に座っちゃったよ。戻りにくいよこれ。
「なんだろうね。生徒会室なら早く行った方がいいかも」
「はい。ありがとうございます」
最近何気にこの人と話せるようになったな。コミュ症は治らないけど。
「いってらー」
「おう」
さて、急ぐかな。
生徒会室は2棟の3階にある。鯖那智のクラスからは少し遠いと感じるくらいの距離だ。
この学校広いよなー。お、見えてきた。
生徒会室の前で一呼吸。よし。ノックして。
「失礼します」
よっしゃ完璧。焦ってないぜおれ。
「1年3組の日暮です。なにかごボっ。ご用ですか?」
やっちまった。生徒会室なんて初めてなんだもん!
「や、きたね。鯖那智くん」
「神...崎さん」
「なんなの、その間。ま、いいや。鯖那智くん、あのね。お願いがあるの」
「はい、なんでしょう」
「私ね、生徒会やってるんだ。でさ、ちょっと書類溜め込んじゃって。片付けるの手伝ってくれない?ね?ちょっとだけ」
「は、はあ。いいですけど」
「ほんと!?ありがとう!助かる!」
なんかこの人の弱点的なの見ちゃったかな。ちょ。腕ブンブンしないで。とれちゃう。
「それともう1つあって...」
「はい、なんでしょう」
「...これは今は言えないなー。放課後に言うね」
「はあ」
「ごめんね」
「いえいえ、じゃ片付けますかー」
「うん!」
真矢の頬は少し赤く染まっていたが窓の光の逆光で鯖那智はそれに気がつかなかった。
10分後。すんなりと書類は片付き、真矢に散々礼を言われ、鯖那智は急ぎ足で教室に向かっていた。
早く飯食わねーと、時間なくなるな。神崎さん、もう一つ言いたいことがあるって言ってたけどなんだろ。いや、別に変な期待してませんよ!?本当デスヨ!?よし、教室見えてきたな。
教室に入ると、
「おーう、帰ってきたな。サブ」
おいおい、こらおい、なんだてめえの満ち足りた表情。こちとら書類まとめてたんだぞ。
「中々大変だったよ」
「おつかれー」
「おつかれ、鯖那智くん」
「ありがとうございます」
飯食お。どけ!リア充!
午後の授業も終わり、鯖那智はいつも通り帰りの身支度をしていた。
もう少しすると透も来るはずだけど。
廊下をチラ見するとそこに立っていたのは透ではなく真矢だった。指で手招きをしている。
「...」
後ろを確認し、「俺?」と指で合図すると真矢は首を縦に振った。
あ、なんか言いたいことがあるって言ってたな。べ、別に変な期待なんてしてませんよ!
「ごめんね。昼休みに言いたいことあるって言ったじゃん?それをいいに来たけど...ここじゃまずいかな。ついてきて」
「はあ」
やっぱ期待しちゃいます。
連れてこられたのは屋上。普段は昼休みの昼食の時にしか使われることがないため今は人気がない。なので今いるのは鯖那智と真矢のみ。
「...ここならいいかな。それでね、言いたいことってのはね...」
え、そ、そんないきなり!?こっちも心の準備が...
「あの...そのね......透くんと私の仲を取り持ってほしいの」
少し頬が赤くなっている真矢はそんなことを口にした。
「へ?...透の...仲?」
「そう。鯖那智くん透くんと仲良いでしょ?ここだけの話...私、透くんのことちょっといいなって思ってるんだ。あ、千聖から取るとか考えてないよ?ただ仲良ければいいなと思ってるだけで...」
「は、はあ」
別に期待なんてしてなかったですよ。はあ〜↓↓
「それでさ...その...明日の朝、透くんの横にいていいかな?」
「え?あ、ああ。別にいいですよ」
「本当!?ありがとう!」
「つまり明日から俺、神崎さん、透、千聖さんの順番で学校に行くってことですね」
「そういうこと!大丈夫!話題はちゃんとあるから!」
「それなら問題ないですね」
「...お、サブここにいたんだ。神崎さんもいるの...あー、なんか邪魔だった?」
「いや、そういうわけじゃないけど。もし同じ場面に出くわしたらそんな風にズカズカ入ってこない方がいいぞ。邪魔だった場合もあるかもしれないから」
「おう。気をつけるよ」
こいつ、おれにそういうのはないと思ってやがる。そうだけどさ。
「鯖那智くんに言いたいことがあってね。もう済んだよ」
「そ、じゃ帰ろっか。神崎さんもどう?送るよ」
「んーん。まだ生徒会の仕事残ってるし。また今度お願いできる?」
「おっけー。じゃ、明日ね」
「うん。2人とも明日」
「失礼します」
神崎さん、すげーな。あんなポーカーフェイス作れるもんなのか?女子ってそんなもん?
家に帰るといい匂いが立ち込める。ここだけはいつもと変わらない。
「おかえり」
「おかえりー!」
「ただいま」
今日は疲れたな。なんか色々あったし。
自分でもよくわからないようなことが色々起こった日常でも。いつも通りでもいつも通りじゃなくても。それが俺のほんの少しの幸せなのだから。壊れたくないと思うし壊したくない。俺は俺なりの生活を楽しんでいきたいと思う。...なんて、難しいことは俺はまだ考えることができないな。今日はもうおしまい!
「遅いわよ。サブ」
「お兄ちゃん早く早く!お腹すいたあ!」
「おう、ごめんな」
「さて、それじゃあ、せーの!」
「「「いただきます!」」」
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