第4話
「日暮くん、もし私が日暮くんのこと好きって言ったらどうする?」
え?あ?おれ告白されてる?まじかよ。んー、顔がよく見えねーな。誰だ?
「やっぱり迷惑だよね...」
は?おれなんも言ってねーよ!なんで顔が見えねーんだ!誰だよ!
「ありがとう。日暮くん。私幸せだった」
ちょっと待てって!おい!おれの話を...
「お、に、い、ちゃ、ー、ん!! 遅刻するってーー!!!」
「...え?」
「早く起きて!!楓が遅刻しちゃうー!!」
「うお!マジかよ!すまん!」
ほんとごめん。楓。
楓を送り、学校に向かう鯖那智は今日見た夢のことを考えていた。
誰だったんだろう。ていうか告白されてたし俺。そんなに俺性欲強いかな。
「お、サブじゃん」
「おー。」
爽やかイケメン登場。
「神崎さんから連絡あってさ。今日話してみたいんだって。」
「あ、ああ。別にいいけど」
「おっけ。言っとくわ」
あれ?もしかしてこれ神崎さん脈ありパターン?
ある学校の校門前。大勢の生徒が行き交う中、ひときわ注目を浴びる3人の生徒がいた。1人は神崎真矢。2人目は能穂矢透。そしてもう1人、新しくここの高校生になった美少女、風花音。
数々の生徒が彼女に視線を送る中、花音はたった1人の者に視線を送っていた。注目を浴びる能穂矢透、の横にいるいかにも平凡そうな男。その男が彼女の視線に気付いた時、彼女は笑っていた。
「日暮くん、久しぶりだね」
その男にはその声は届いていない。だが、何か頭に引っかかるものを男は感じていた。
昼休みになり、鯖那智の席の周りにはいつものごとく透がいた。そしてあと2人、彼女さんの千聖(リア充)と神崎さん(非リア充)が座っていた。全く頭がさがるぜ。まさか俺にこんな人気者どもとお食事をする機会が回ってこようとは。ここはビシッと決めておれも人気者になるチャンスだぜ!
リア充がイチャイチャしてる中、神崎さんが口を開いた。
「日暮くん」
「ひゃ、ひゃい!?」
やべ、変な声でた。
「日暮くん、で合ってるよね?」
「は、はい」
「そっか!よかったー、これからよろしくね!」
その眩しい笑顔をやめろ。恋しちゃうぞ。
「神崎さんはなんでここにいるんですか?」
「あれ?透くんから聞かなかった?」
おい、そこの。卵焼きアーンさせてもらってるやつ。羨ましいからやめろ。
「なんか話したいことがあるでしたっけ?」
「敬語やめなよー。んー、ただおしゃべりしたかったからかな」
「そうですか。そんなに話のネタもちませんよ」
「そういうのは私に任せて!私いろいろもってるから!」
お、おう。この人あれだ。蓋を開けたらなんとやらタイプだ。
2人が盛り上がっている中、神崎さんの顔が少し赤く、いつもの調子とは違うことに気付いたのは透だけだった。
午後の授業も終わり、鯖那智はある者と帰り道を歩いていた。いや、正確にはストーキングされているといっていいだろう。今日は透がいない。昼に話が盛り上がってしまい、今日は一緒に帰ろうと言い始めたからだ。
これやばくない?めっちゃ怖いんだけど。男?女?刺されたりしないよね?ね?
曲がり角を曲がるときにチラッと見てみると、どうやら同高校の女子生徒のようだ。
女か。なら最悪の場合力づくでナイフとれるか?よし。あそこの曲がり角で待ち伏せしよう。
曲がり角で曲がり、すぐそばで待っているとその生徒は鯖那智の行動に気付かずにいたらしい。前に立つ男性の顔をみるや慌てて曲がり角の電柱に身を隠そうとしていた。
「いや、隠れきれてねーから」
意を決したようにでてくる彼女は一言で表すなら「美少女」だった。黒髪のストレートヘアー。
うお。かわいい。
「なんか用ですか?」
「え、いやその...」
まてよ、この人どっかで。あ、
「朝の皆が見てた人か」
「あ、そう」
あなた透見てなんか言ってましたよねー。ていうかなんかこの人見てると頭が痛いな。
「え、ていうか」
彼女は口を開いた。
「まだ思いだせない?私のこと」
「は?」
「花音だけど」
か...の...ん...。誰?
「中学の時転校しちゃったけどまた戻ってきたんだ」
「あ、あー!」
思い出した!おれをいじってた(注 いじめではありません)女子グループの端のポジションにいた人だ!確か、結構話しかけてくれて友達寸前くらいまでいったときに転校になっちゃったとおもう。
「お久しぶりです」
「思い出してくれた?よかった」
よかったていうか、そんなことよりも
「なんで追いかけたりしてたんですか」
「だって、久しぶりだし。いざ話そうと思っても勇気でなくて」
「そうなんですか」
「今日はそれだけ言えればいいかな!とりあえず久しぶりて言いたかった!あとここらへんとか分かんないから教えてね!じゃあね!」
「あ、はい」
えらい早口だな。もっとおとなしかったイメージあったけど。ん?最近どっかで会ったよな。あの人。あれ?
帰り道を歩く女子生徒、花音は1人嬉しそうに笑っていた。
「日暮くん、かっこよかったな。あの時と何も変わらない」
「やっぱり...好きだな」
花音の顔は幸せに満ちていた。
「ただいまー」
「おかえりー」
「ん、姉ちゃんは?」
「今日おそくなるんだって。適当にご飯作って食べてだって」
「そうか」
「てことで、姉ちゃん帰るまでゲーム勝負じゃー!!」
「負けねーぞ!」
鯖那智はバッグを部屋に放り投げ、コントローラーを手に取った。2人ともこういう日はご飯にはまだ手をつけない。家族全員で食事をすることを2人で約束したからである。2人はずっと姉の帰りを待っているだろう。
「やっぱり早く帰れなかったな」
仕事場から車で家に帰っている明日香は独り言を呟いていた。
家までは20分足らず。早く帰ろう。
やっと家に着き、重い体を家まで運ぶ。
ドアを開けた途端明日香の体はさらに重くなった。
「おかえりー!お姉ちゃん!」
「おう、おかえり」
「なんで起きてんの」
「ふふーん! お姉ちゃんお腹すいたでしょ! ご飯食べよ!」
「やっぱり食べてないの?」
「あ、ああ。やっぱみんなで食べないとな」
「そ」
本当にばかなんだから。
「さっさと食べるわよ」
「お、おう」
明日香は怒っているような口調だったが顔はとても嬉しそうな様子だった。
「ありがとう」
「ん?なんだよ急に」
「そうだよー!いつものことじゃん!」
「ふふっ、そうね」
テーブルの上には既に食事が並べられていた。
明日香はいつもよりも大きな声をだした。
「それじゃ、せーの!」
「「「いただきます!」」」
今日も日暮家の食卓は賑やかである。
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