第3話

あれから数日経ちうちの学校では唯一休みの日曜日が来た。時刻はまだ9時前を指している。さて、なにしようかな。

「ねえ、鯖那智」

振り返ると姉がいた。

「ん?」

「後で買い物手伝ってよ。1人じゃ大変だからさ」

「いいけど、楓はどうする?」

今日は珍しく家族全員集合している。いつもは姉は仕事のはずだが今日は休みらしい。

「暇なら連れてく」

「ん、分かった」

楓はまだ寝ている。行くとしたら昼からか。

「それからさ、たまには家事手伝ってよ」

「あ、うん。何がある?」

「草むしりかトイレと風呂掃除。どっちがいい?」

悩みどころですな。

「じゃあ、トイレと風呂で」

「分かった。草むしりしてくるから何かあったら言ってね」

「うん」

さてと、やりますかな。



まずはトイレ掃除か。洗剤はどこにあるかな。

ガチャッ

「お兄ちゃん。お姉ちゃんは?」

「お、起きたか。外で草むしってるぞ。パジャマ着替えて手伝ってやれ」

「ん」

あくびしてから楓はトイレの戸を閉めた。あ、忘れてた。

「楓ー」

「んー?」

「昼から買い物行くがおまえも行くかー?」

「行くー」

「おーう」

再び戸を閉め、掃除再開。お、洗剤あった。早く終わらせて姉ちゃんたち手伝お。



合計1時間ぐらいかけてトイレ.風呂掃除終了!さて、次は草むし

ピンポーン

ん、誰かな。

玄関のドアを開けると

「やあ」

「透か、いいとこにきた。手伝え」

「え? あ? 何を、ちょ!」

透に無理やり軍手をつけ、庭に出るともう半分ほど終わっていた。

「ん、そっち終わった?」

「ああ。手伝うよ」

「おはようございます」

「透くんおはよう。え?その格好は」

「手伝ってもらう」

「半ば強引ですけどね。手伝いますよ」

「はあ。ごめんね。ありがとう」

「透くんだーー!!」

「やあ、楓ちゃん」

「後でゲームねー!!」

「今日は負けないよー?」

透が入りなお賑やかになる日暮家だった。



草むしりも無事終わり、俺は楓と透とゲームをしていた。時刻を見るともうすぐお昼時だ。

「透くん、お昼ご飯どうする?いまから作るけど、食べてく?」

「あ、本当ですか?いただきます」

「ん、ごゆっくり」

姉と透が話している間、おれは楓に23回目の勝利の雄叫びをあげていた。

「はっはー! おれの勝ちや! V!」

「むー、次は負けないもん!」

今の所23勝2敗。20回以上その言葉を聞いている気がする。

「サブ強いなー。次やろうよ」

「おう、コテンパンだぜ」

「はい、透くん」

「ありがとう、楓ちゃん」

それから30分後、鯖那智は最初の1回しか勝つことができず、部屋の隅ですねていた。高スペックイケメン恐るべし。



「やっぱうまいです! この料理!」

「よかった。おかわりあるから」

「俺おかわり」

「楓もー!!」

「僕もお願いします!」

「う、うん。ちょっと待ってて」

姉は少し困りながらも嬉しそうに微笑んでいた。

「おまえの姉ちゃんすげーよな」

「俺も思うよ」

「楓もー!!」

「楓ちゃん、お姉ちゃんとお兄ちゃん好き?」

「だーいすきーー!!」

「ぽう!」

「よかったな。サブ」

「サブは楓ちゃんとお姉ちゃん好き?」

「そりゃ家族だから好きじゃなかったらなんなんだよ」

台所の方で食器の割れる音がした。

「わ、わ。ごめんなさい」

「大丈夫かよ。姉ちゃん」

うわ、血出てるし。

「ちょっと待ってて」

「あ、うん」

ばんそうこう。ばんそうこう。あ、あった。

「気をつけろよ。焦んなくてもいいから」

「別に焦ってたわけじゃ...」

「あ?なら滑ったのか?」

「別にいいでしょ!ありがと!また作るから座ってて!」

「あ?なんなんだよ」

本当に。

「おまえ、大変だな」

「いつもはあんなじゃないんだけどな」

「いやそうじゃなくて」

「へ?」

「んーん、なんでもない」

「おう、そうか」

鯖那智と楓はただの事故だと思っていたが、鯖那智に「好き」と言われた瞬間トマトのように顔が赤くなった明日香に透は気付いていた。



「「「「ごちそうさまでした!」」」」

「ふぅー。食ったな。2時くらいに出発でいいか?」

時計は1時を少し過ぎた辺りを指していた。

「ん、わかった」

「どっかいくの?」

「買い物だよー!」

「へー。僕も行きたいなー」

「ああ。食材運び手伝え」

「え...」



準備をし、家の鍵を閉め、

「んじゃ、出発ーー!」

モールへと出発します。

モールへ着くとさすがに日曜日。駐車場は満杯。歩いてきたのは正解だったようだ。中も人だらけ。さて、まずは、

「何買うんだっけ」

「ここに書いたから透くんと買ってきて。それ以外は私と楓で買ってくる」

「お、おう」

「...」

なんだよこの量。姉ちゃんこれ溜めてたな。冷蔵庫入るのかな。透、ごめんな。

「じゃ、まずは野菜から行くか」

「あ、ああ」

あー透くん察しましたか。これ運ぶの地獄ですよ。歩きですし。

「じゃあカゴの中にいまから言うから入れてくれ。人参、大根、きゅうり、玉ねぎ、アスパラガス、レタス、白菜、トマト、ジャガイモ...」

地獄だな。



野菜も一通り買い終わり、お菓子エリアや美容エリアに行き、メモの中の物は全て買い揃えた。おいおい、なんだよコラーゲンサプリメントて。姉ちゃんの方のメモに書けよ。

レジに行くと楓と姉はすでに買い物を済ませていた。なんか姉ちゃんたちの袋小さくない? 楓大丈夫かな、あれ。手プルプルしてるけど。なにが入ってるんだろ。

レジを打つたび次々と値段が上がってゆく。すげえ、食料てこんな高いんだな。

「カードで」

姉から借りたクレジットカードを使い袋詰めに入る。さっきから透は一言も喋らずゾンビのような顔になっている。ダメだぜ!せっかくのイケメンが台無しじゃないか!いつもそんな感じでよろしく☆

「ん、上出来じゃない。ありがと」

「透、大丈夫か?」

「ダイジョウブ」

ダメだこいつ。

「さて、帰るわよ」

「行、行っくよー!!」

「おーう」

「オ-ウ」

1人暮らしはまだしないでいいかな。



家に着き、完全に生気を失っている気がする透を家に送り、再び家に着くとすでに7時を回っていた。

「ご飯作るからお風呂入っちゃって」

「ん、楓ー。先入るかー?」

「後でいいよー」

「おーう」

早く汗を洗い流したいぜ。



風呂も入り、いつもの賑やかな食卓を囲み、姉と透の話をし、歯を磨いて「おやすみ」と言い、ベッドに横になる。さすがに今日は楓も疲れたようで夕食を食べるとすぐに寝てしまった。俺も疲れたな。

あくびを1回するとすぐに目を閉じ、長く感じた休日は終わった。



「はぁ...」

テーブルの上に乗っている弟のネックレスを眺め、明日香は弟の放った言葉を思い出していた。

「好き...か...」

ネックレスをつつきながら嬉しそうに口角を上げる明日香の心情を実の弟、日暮鯖那智は知るよしもない。

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