第21話 要はお笑い脳
①将来子どもが生まれたら
休日、大悟は要の家に遊びに来た。
「お、金魚だ。この前祭り行ったときのだよな?」
「うん。今エサやる」
要は金魚鉢のそばに置いてあるエサの袋を取り、二匹の金魚に向かって言った。
「やすよ、ともこ。ご飯だぞー」
「……ん?」
「何だよ、金魚に名前を付けて悪いか?」
「いや、そうじゃねーよ。ただ名前が気になって……」
「ああ、こいつらの名前、結構悩んだんだよね~。やすよとともこか、つよしとれいじか」
「……へ~……」
「ボク、付けなかった名前は将来子どもができたときにとっておくつもり」
「や、やめといた方が良いと思うど」
「え~……。じゃ、せいじとこうじ」
「そういうことじゃねーよ!」
「もしくはこーせーあー……」
「要、おめーもう少し考えた方が良いど」
子どもがいじられる展開を、と大悟は心の中で付け足した。
②同期三人でカラオケ
「ふぃー、ちょっと休憩~。女性アーティストは歌い慣れないわー」
「要がこの曲歌うなんて意外。ユーミン好きか? それとも魔女の方?」
「まあ好きだけど……」
「……?」
要の答え方が何だか気になる晴真は、首を傾げた。そしてそのとき、大悟が「晴真、これ」と言いながら晴真にとあるメモを渡した。
「あー次『纏』じゃん! ディーゴ、デュエット!」
「ほーい」
「お前も一応チルドレンなんだから!」
「一応ってなんだ、ファンに向かって」
二人が歌い始めて、晴真は先ほど受け取ったメモを見た。そして晴真は要の選曲について理解した。
「……あー、なるほどね。オレそこまでは分かんない」
メモの見出しには、「芸人出囃子一覧」と書かれていた。このメモは実質的に、要の「カラオケで歌う曲リスト」にもなっている。
「つーか何気に二曲連続か!」
③年末の漫才頂上決戦は絶対に家にいる男
「こぉぉぉのやぁろぉぉおぉぉぉぉぉぉお~っ!」
「ひえぇ~っ! すみませんもうしません勘弁してくださ~いっ!」
大泣きして平謝りする男。奴はひったくりしたところを晴真に捕らえられた。今は要に馬乗りされ、これでもかというくらいグーやパーで顔を殴られている。
「お前を追いかけていたせいで、帰り遅くなっただろうがくそったれぇぇぇええぇぇぇぇえっ!」
「ぎゃあああ~っ! 許して~!」
「要、もうその辺に……」
「うるさいっ! こいつのせいで今日のネタ番組リアタイできなくなったんだからなぁぁぁっ!」
「お前のことだから、どうせ録画したんだろ? じゃあそれで……」
「良い訳ねーだろクソボケエェェェエェエェェエッ! 視聴者投票参加できなくなっただろうがあぁぁぁぁぁあぁぁあっ!」
「……」
晴真も被害者の男性サラリーマンも、恐怖を感じながら唖然としていた。
「……それからもうお笑い番組の生放送のときは、要先輩は絶対に直帰か有給休暇を?」
「……あのときサツに注意されたからな。やり過ぎだって……」
晴真の返答を聞いて、譲は「全くあの人は……」とため息を吐いた。
「それで被害者の人、要のこと相当怖かったみたいで、次の日気ぃ遣って菓子折り持ってきてくれたんだぜ。それが運良く苺大福だったから
、要の機嫌が直ったんだけどさ」
「でもテレビを優先しないでその人を助けるって、結局は優しいんだよね要も」
「……まあ、言われてみればそうですね」
「オレもそう思えなくもないです……」
二人は凛の言葉を否定できなかった。
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