第20話 さくらちゃんが語る
わたし、さくら。
白猫の女の子。
わたしは、わたしがわたしであることに気がついてから、淋しい日々を送っていたの。
そしてある日のこと。退屈だったから木に登っていたんだけど、降りられなくなっちゃった。どうしたら良いのか分からないわたし。にゃーにゃーなくことしかできませんでした。
でもね。
「大丈夫だよ、今助けるからね」
そのとき、パパが来てくれたの。パパはせっせと木に登って、わたしを助けてくれた。
もうダメかと思っていたから、本当に嬉しかった。
ありがとう。本当にありがとう、パパ。
「この子、木の上にいたんですけど……」
パパに助けられたわたしは、早速病院に連れられた。優しいパパと離れるのがつらかったけど、パパはわたしのことを思いやってくれたんだよね。
色々調べてもらったけど、わたしは何もなかった。そしてそれを病院の先生は、すぐパパに伝えてくれた。パパはすごく喜んでいたんだって。わたしが元気だって知って、嬉しくなっていたんだって。本当に好き。
「この子と暮らしたいです」
パパが病院に来たとき、先生にそう言った。先生は喜んで、わたしをパパの元へ運んでくれた。わたしも喜んで、にゃーってパパにあいさつした。そしたらね、
「よろしくね、さくら」
わたしに名前を付けてくれたの。何でわたしが「さくら」なのか。それはわたしの耳の中がピンクっていうことと、木にいたからなんだって。
かわいい名前。嬉しかった。
素敵な笑顔でわたしのことを呼んでくれて、嬉しかった。
「にゃあ~」
次の日の朝。わたしはパパにくっついた。淋しくないことがとっても嬉しくて、パパにスリスリした。ずっとパパに着いていっていた。
わたしがそんな調子だったから、パパは、
「……さくら、一緒に行こうか」
わたしをお仕事するところに、連れていってくれたの。
「きみちゃん、おはよう~」
「おはようございます凛さん……あらっ?」
そこに着いたら、とってもかわいいお姉さんがいた。絶対優しい。すぐに分かったよ、わたし。
わたしは、パパの腕の中からぴょんっと出て、そのお姉さんのところへ行った。
スリスリ、スリスリ。
するとね、すごく喜んでいた。わたしのこと、かわいいって言ってくれた。
「さくらちゃん、よろしくね」
こちらこそ、よろしくねママ。
嬉しいな、嬉しいな。
優しいパパとママができて、わたしは幸せです。
「朝からおれに離れなくて……。淋しいのがかわいそうで、連れて来ちゃった」
「ずっと一人ぼっちだったから、凛さんに出会えたことが嬉しかったんですね。かわいい」
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