第11話 COOLMANの友達

「はいよ、おまたせ凛ちゃん!」


 凛の目の前に、やっと注文の品が姿を現した。


「お、おお……」


 一同、感嘆の声。


「おい、お前らは働けよ」

「ひぃっ! すみません!」


 あの三人組も思わずじっと見てしまった(そして要に怒られた)それはパフェ。しかし、ただのパフェではない。凛以外のC-membersの面々が頼んだもの全てが入ったパフェであった。


 生クリームとさくらんぼが乗ったプリン。

 苺大福。

 あんみつ。

 チーズケーキ。

 コーヒーゼリー。


 形はある程度変えられてはいるけれど、全部揃っている。


「全部詰め込んでありますけど、これって……合うんですか? それぞれが」

「分からない。でも食べたい」


 心配そうな姫美子に、凛はうずうずしながら言葉を返した。


「いただきます!」


 凛が食べ始めると、一同は凛をじっと見た。


「だから働けよお前ら! 学校に言うぞ!」

「は、はいいっ!」

「ん! おいし~!」

「ええっ!」


 ここで、要はスマートフォンを取り出した。三人組はひたすら謝っている。


「ああ~、おいしい! 全部食べたいなら、全部食べるべきだね」


 幸せそうに食べる凛に、見学者は何も言わなかった。ただただ、「本当に甘いもの好きなんだな、この人……」と思うだけだった。


 黒いスーツが決まったSP風の格好、183.5cmという長身、そして空手黒帯と三拍子揃った男・凛。その名の通り、凛々しい男だ。そんな男が今、ものすごく幸せそうに、ごちゃ混ぜパフェを食している。「ごてぇ~」というような表現がいかにもマッチしそうな、カオスなスイーツを。


 この光景、ツッコみたくなる者は少なくないだろう。しかし誰もツッコまなかった。その幸せ気分を壊してはならないと、皆が思ったからである。


「凛ちゃんは、本当にうまそうに食うなあ~」

「いっさんの作るスイーツは、いつもどれもおいしいですね」

「おう! おめーらはオイラの友達だからな! いつだってうまいもんを作ってやる!」


 一郎は胸を張って、誇らしげに言った。

 

「COOLMANのみんな、いつも世の中のために頑張ってるからな。オイラはちょっとでも、そんなCOOLMANの支えでありてぇ!」


 「喫茶てんやわんや」は、COOLMANの社員全員の行きつけの喫茶店と言っても過言ではないのだ。


「でも、金はきっちり取るんだよね」

「商売だからな! 要、おめーはホント、オイラに容赦ねぇな!」

「ねぇ、レモンティー、レモンティー持ってきて! 」

「オイラだけじゃなかったか」

「良い? レモンティーはお前の」

「もう汚い表現というのは分かったので、やめてください」


 譲はイライラしている。


 「ごちそうさまでした!」が聞こえてくるまで、まだまだ長いようだ。

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