第9話 Sadisticが止まらない

「うお! なーにしでんだ、おめーら!」

「どうしてここで働いているの……⁈」

「おい、今度はここで悪さするつもりかよ!」

「ちょっと先輩! これはどういうことなんですか⁈」


 行きつけの店に入った直後、大悟、姫美子、晴真、そして譲は、まさかの三人組再登場に驚いている。


「良かった~。真面目に働いているみたいだね」

「え゛っ!」


 驚いている四人は、一斉に凛の方を向いた。


「凛さん、知っていたんですか」

「ボクさっき言ったじゃんよ、譲ちん。凛さんにも伝えたって」


 凛と譲が試験会場へ向かった後、一体何があったのか。




「頼むから、縄をほどいてください!」

「やだね。どうせ逃げるでしょ、お前ら」


 凛と譲が試験会場へ向かった後、要は即行動に移った。まずは放心状態あるいは失神状態の三人組を、縄でぐるぐるに縛り付けた。正気にかえった際にも絶対に身動きがとれないようにと、頑丈に縛られた三人組。気が付いたら自由を奪われていて、三人全員驚いていた。


「見て! こんな写真も撮れちゃった!」

「へ……?」


 要は、自分のスマートフォンを三人組に見せた。


「ゲッ……!」


 三人組が見たのは、自分たちの醜態であった。大の字に倒れたA、泣き崩れるC、そして最も精神的にきついのは……。


「わー! やめてくれ、本当にやめてくれ!」


 人前で失禁してしまった、Bだ。


「消して! 頼むから!」

「さーて、どうしよっかなー♪」

「お願いします! 誰にも見せないで~!」

「じゃ、ボクの言うこと、聞いて」


 要は三人組に、自分が考えていることを話した。


「……じゃ、そこで働けば良いんですね?」

「うん」

「警察に黙っていてもらえるんですね? 今回のこと」

「うん」

「反省すれば、写真を誰にも見せないんですね」

「うん」


 要の返事を聞いて、三人組は安堵した。


「あ、もしもしー?」


 要はCOOLMAN本社に三人組の件を報告した。数分後、本社から送迎車が来て、三人組は「喫茶てんやわんや」へと送られていったのだ。

 そして、今に至る。


「いや~、驚いたよ! まさか手伝いよこしてくれるなんてよ!」


 「てんやわんや」のマスター、一郎いちろうは助かっていた。


「いっちゃん、人手足りないって言ってたじゃん。だからさ」

「要はちょっとやり過ぎかもしれないけど、いっさんも助かっていることだし、この三人も反省するし、一石二鳥だね」

「は、はあ……」


 凛は三人組の行く末について肯定的ではあったが、大悟、姫美子、晴真、そして譲の四人は少々引き気味だった。

 やはり要を敵に回したら、絶対に危険だ……、と。


 カランコロンカラーン。


「お、いらっしゃーい!」

「失礼します。私は……」

「あ、もしかしてこいつらの先生⁈」


 要は、三人組を指差して、来客に話しかけた。


「あ、はい! そうです!」

「嘘だろ~!」


 三人組は、そろって膝をついた。そして要は言った。


「サツには電話しないって言ったけど、学校に連絡しないとは言ってないし」


 ちなみに三人組が通う学校の連絡先は、あの兄妹の兄から聞き出したとのこと。三人組の処罰については、学校側に任せた。とりあえず今日ここで働かせることは許可された。




「おい、オモラシ! オモラシオシッコ!」

「ちょ、その呼び方やめてくださいよ! 音無おとなし俊彦としひこです!」

「要、食事中のお客さんがいるから、それは良くないよ」


 要は凛に注意された。そして要は「はーい」と言い、訂正する。


「じゃ、レモンティー! しっかり働けよな!」

「うっ……」


 音無は泣きべそをかいていた。


「凛さん、レモンティーって良いんですか?」

「まあ下品じゃないし、セーフかな?」

「はあ……」


 しばらくレモンティーは飲みたくないな、と思う譲であった。





 

 

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