第7話 武器なんていらねえよ、勝つ

 譲と同じく、凛も戦いを繰り広げていた。


「おいおい丸腰かよ! 良い度胸してんじゃねーか!」


 譲と同様に、凛にもナイフを持った相手が襲いかかってきた。しかし譲と違ったのは、凛は相手が来るまでその場を動かなかったということだ。


「何だ、逃げないのかよ!」


 三人組Cが凛にナイフを突き刺そうとし、その手を振りかざそうとしたそのとき、


「うあっ!」


 凛の右足が、ナイフを持つ手を捕らえた。凛のハイキックによってナイフが三人組Cの手から離れ、凛は素早くそれを奪い、二度と相手の手に持たせないように遠ざけた。


「クッソいってぇ~……! ひぃ~……」


 あまりの激痛に、三人組Cは片方の手で、蹴りを食らった手をさする。


「よくも……、っ!」


 怒りを露わにした三人組Cの顔にはもう、凛の鉄拳が目の前に突きつけられていた。


「もう、やめようよ?」


 正拳突きの体制のままで、凛が三人組Cに優しく言った。すると三人組Cは、


「……はい」


 泣きべそをかき、へなへなと腰を下ろしながら、弱々しく凛の言葉に返事した。


 戦闘が終わり、凛は譲の元へ駆け寄ったの


「大丈夫?」

「凛さん。はい、無事に片付きました」

「良かった~……」


 譲の言葉を聞いて、凛は胸をなでおろす。


「それにしても、凛さんは今日も強かった……」


 要は、凛の戦闘もきっちり見ていた。


「さすが物心ついたときにはもう空手道場にいたってだけはある……」

「あ、忘れてた!」


 要が凛の活躍ぶりを回想していると、凛が突然大きな声を出した。


「凛さん?」


 一体何があったのだろう。急に走り出した凛を、譲は不思議そうに見ていた。


「ごめんね、大丈夫?」

「うっ……うう……」


 凛が駆け寄った先にいたのは、膝をついて泣いている、三人組Cだった。


「あの二人に、後でごめんなさい、しよう」

「はい……」

「もう二度と、こんなことしないって、約束だよ」

「……はいっ!」


 三人組Cを優しく諭す凛を、譲はじっと見つめていた。


「譲ちん、何見てんの? いやーんエッチぃ~」

「……何でそんなに空気読めないんですか先輩……」

「違うよ、ボクは空気を読めないんじゃなくて、読まないんだ!」

「偉そうに……」

「あ、ごめんなさい! 便所でお尻を……」

「先輩!」

「ねー、凛さん! このクソバカ三人組、どうする? ボク今までほぼニートだし、後やっとく?」

「うーん、そうだなぁ。あの兄妹が無事着いたかも気になるし……。じゃ、後はよろしく!」

「はいは~いっ! まっかせて☆」


 ゾクッ……。

 何やら楽しそうな要の言い方に、譲は嫌な予感がした。


「要、後で合流しよう。行こう譲」

「はい……」


 凛と譲は要と別れ、英語検定の試験会場へ急いだ。


「さぁ~てと……」


 要は周りを見渡し、目をギラリとさせ、ニヤリと笑みを浮かべる。


「ボクのお楽しみは、これからだ♪」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る