番外話④ 革命

それは【害蟲】の跋扈ばっこする現代から見れば、かなり昔の話だ。

熟語ではそういうの、太古とか言うんだっけか。まぁ、どうでもいい。


世界には高い高い建物ばかりが並ぶように建っていた。高層ビルがざらにあったんだよ。信じられるかい?

それが突然、爆発で滅んだ。

たった一人の研究者の失敗で、世界は終わってしまったのさ。

滅んだ世界には、科学ではなく魔法が溢れた。ドラゴンが空を治め、地上では魔法遣いが攻防を繰り返す、そんな時代だ。


絶望こそ有りはしたが、それさえ霞むほどの夢がそこにはあった。

たった1個の丸パンで旅をしたり、弱虫のドラゴンが仲間に出会い強くなったり……。

幻ではない本物の夢が、あったんだ。




そんな中、東洋へ足を運び、蟲で夢を創ろうとした学者がいた。

それが、ルキナのお祖母さんだ。

彼女は世界を夢で溢れさせたかった。

魔法を学んでいた彼女はある時、うっかり不老の呪いを掛けられてしまった。

彼女は【不滅】の魔女を名乗り、ひっそりと生き続けた。


結果どうなったか?


命の理を破った彼女は、あれだけ守りたかった夢を穢す存在に為ってしまったのさ。


彼女は彼女を呪ったヤツらを赦さないと誓った。ヤツらとは誰か、解るかい?



――――解らないか、まぁ仕方ない。



ヤツらとは即ち、私たち学者だよ。

もっと正確に言えば、【ちょっと変わった学問をかじった学者】。

私なんか、誰も調べたがらなかった有毒蟲を調べまくっていたし。


まぁ、彼女は特に呪術を修めた者を次々と襲いまくった。

私の父親は、この国で異国の呪いを研究していた人でね。

蠱毒こどく】とかって言うらしいけれど、私にも良く解らなかった。

――――結局ルキナの祖母に、私の父親は殺されてしまった。

私は彼女…………【不滅】に復讐する為にルキナに近付いたのさ。




だけど、長らくその目的を忘れていた。

拓舞君。君がもしこの話を聞いてきてくれなかったら私は、忘れたままだったかも知れない――――――――。




思い出した事で私はどうやら、【害蟲】を研究していた意味も思い出した。

……お願いだ。もう一度、君の力を貸してくれないか?

君の体には弦宗の血が流れている。

それはただの血じゃない。

冗談抜きで、この世界を変える革命の血。

他の【害蟲細胞】の能力を一切受け付けぬ、【鍵蟲カギムシ】の血…………。


君は生まれながら【害蟲】の能力を持った『新しい』人類なんだよ。




私が蟲を研究していた意味。

それはきっと、君という革命と出逢う為だったんだろう。

それを君が思い出させてくれた。

これだけで、もう革命だよ。




お願いだ。君の力を貸してくれ。

世界を、君の力で変えて欲しいんだ。

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