♯9 命と星、どちらが重い?

目が覚めた時、すでに翌朝。

ニュースでは星座占いをやっている。

俺は何と!!

『……ごめんなさ~い、〇〇座の貴方!

公私共にミス連発。

些細ささいな事に気をつかって。』




12位である。ツいてねぇ。


『開運のおまじないは……

【1:1でコーヒーと牛乳を混ぜる】です』

何じゃそりゃ。開運に関係無いだろ。



「……ふゎ……お兄さんおはようございます……」


え、いたの!?

アルナはどうやら俺の部屋にて一晩を越えたらしい。何か嬉しいような怖いような。


お布団の壁側から出てきたところを見ると、俺の背中を見る形での就寝……。

って何考えてるんだ俺!!

もしかしてドキドキしてるのか!?

洋ロリに興奮してるのか!?


いいやそれは無い。

俺は多分連日の頭痛で少し頭がイカれたんだ、きっと。

そう割り切ってコーヒーをれる。

インスタントだけど。

猫舌なので、いつも少し冷ましてから飲む。


アルナにも、カフェオレもどきを作る。

(コーヒーと牛乳を1:1……か)


つい開運のおまじないをやってみてしまう。

俺は何て単純な人間なんだろう。

こういうのが詐欺さぎに引っ掛けられるのである。

それも【幼女が相手なら、なおさら】。


俺はそして気が付いた。

「…………なぁアルナ」

「何です?」

にこやかで眩しい笑顔も。


「お前、さ…………」

その裏側に仕舞しまい込んだ素性すじょうも。



その瞬間全て、単純なわなと知った。

。多分、発信器とか」


刹那せつな嘲笑ちょうしょうの声が響く。

可憐かれんで、どす黒い声が。


「ばれちゃった★」

マジか。信じたくはないが眼が死んでいる。

巫山戯ふざけた真実は、表情も心も殺すものだ。

「出来れば嘘だったら良かったけどな」

覆水不返ふくすいふへん、でしょ?」


似た言葉をいつか用いた気がする。

鸚鵡おうむ返しはこれだからキツい。


「でも、貴方あなたを管理する為だよ?会長命令だから従わなきゃ」

「会長って誰だ!!」

「…………」

プロだ。この娘プロの仕事をしている。

他の人間の、特にやとい主に関する機密は一切口外しない。

この見た目で、下手な犯罪者よりよっぽど熟練じゅくれんした仕事を成したのだ。


俺は思わず両手を伸ばしていた。

無意識だった。

何故…………?

ただ純粋に、そこに正義や目的があるわけではない、力の濫用らんようだ。

またやってしまった。

俺は蚯蚓ミミズの最期を思い出し震えた。


お前が殺った。

お前が命を奪ったんだ。


「――――――――ッ!!!!」


気が付いた瞬間腕を力任せに引っ込め、自分があやまちを犯しそうになった事実を飲み込んで絶望にかった。


息が詰まる。

自分が何故そんな行動をしたのか解らなかった。

「……会長は知っていた。

貴方がまだ力を制御出来ない事も。

そして自分に酷く嫌悪けんお感を抱いている事も」


少女は嗤う、蛾の遺伝子をその身に染み込ませた、シレンと名をいつわる少年を。


「着いて来て、貴方を会長に会わせる」

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