第243話胡・吉・鄭・劉・盧・張等六賢・・・

胡・吉・鄭・劉・盧・張等六賢、皆多年壽、予亦次焉。

偶於弊居合成尚齒之會。七老相顧、既酔甚歓。

静而思之、此會稀有。因成七言六韻以紀之、傅好事者。


七人五百七十歳 拖紫紆朱垂白須 手裏無金莫嗟歎さたん 尊中有酒且歡娯

詩吟兩句神還王 酒飲三杯氣尚麤 嵬峨かいが狂歌教婢拍 婆娑ばさ醉舞遣孫扶

天年高過二疏傅 人數多於四皓圖しこうず 除卻三山五天竺 人間此會更應無 

(三仙山・五天竺圖、多老壽者)


前懐州司馬安定胡杲ここう、年八十九。

衛尉卿致仕えいいけいちし馮翊ひょうよく吉皎きっこう、年八十六。

前右龍武軍長史榮陽鄭據ていきょ、年八十四。

前磁州刺史廣平劉眞りゅうしん、 年八十二。

前侍御史内供奉官范陽盧貞ろてい、 年八十二。

前永州刺史清河張渾ちょうこん、年七十四。

刑部尚書致仕太源白居易、年七十四。

已上七人、合五百七十歳。 會昌五年三月二十一日、於白家履道宅同宴、宴罷賦

詩。時秘書監狄兼謨、河南尹盧貞、以年未七十、雖與會而不及列。


胡・吉・鄭・劉・盧・張らの六人の賢人は、全てが高齢であり、この私は、その次になる。

たまたま、拙宅に集合して、敬老会を開催した。

七人の老翁は、それぞれの顔を見合わせて、酔い、心ゆくまで楽しんだ。

よくよく考えてみれば、このような集会は、稀なことである。

そのため、七言六韻の詩を作って、この集会のことを記し、物好きな人に伝えおくとする。


七人の歳を合わせれば、五百七十歳。

紫、朱の服を身にまとい、あごには白い鬚が伸びる。

懐には金が無いけれど、嘆いてはいけない。

樽に酒があることを、まずは喜ぶべきなのだ。

詩にしても、二句も詠めば気力はみなぎり

酒は三杯も飲めば、元気はつらつとなる。

大声で歌いたい放題、下女に拍子を取らせ、

酔っ払ってフラフラになって踊れば、孫に身体を支えられる。

我々の歳は、傅の職を辞した二人の疏氏をとっくに越しているし、我々の人数は商山に籠もった四人の隠者よりは多い。

三山、五天竺を除けば、この世に、こんな集会があるはずがない。

(三仙山、五天竺の図には、長寿の人が多く書かれている)


前懐州司馬安定胡杲ここう、八十九歳。

衛尉卿致仕えいいけいちし馮翊ひょうよく吉皎きっこう、八十六歳。

前右龍武軍長史榮陽鄭據ていきょ、八十四歳。

前磁州刺史廣平劉眞りゅうしん、八十二歳。

前侍御史内供奉官范陽盧貞ろてい、八十二歳。

前永州刺史清河張渾ちょうこん、七十四歳。

刑部尚書致仕太源白居易、七十四歳。


以上の七人の歳を合計すると、五百七十歳になる。

会昌五年三月二十一日、白楽天の履道里の屋敷に集まって宴会を開き、終了後に詩を作った。

この時、秘書監の狄兼謨てきけんばと河南尹の盧貞ろていは、まだ七十歳未満であったので、会には加わったけれど、ここには並べない。


※合成尚齒之會:一同に会して敬老会を開く。「尚齒」は、老人を尊ぶこと。

※五百七十歳:正確には五百七十一歳。

嵬峨かいが:大声で歌う様子。

婆娑ばさ:よろよろ、ふらふらと踊る様子。

※天年:天から与えられた寿命。

※二疏傅:漢の疏広と、その兄の子の疏受をさす。二人は皇太子の教育係の傅となったけれど、それ以上の昇進を求めず、官僚の職を潔く辞してしまった。その後は故郷に帰り、日々宴会をして過ごした。ただし、二人の実際の年齢は不明。

四皓圖しこうず:商山四皓を描いた図。四皓は秦の暴政から逃れて商山に籠もった四人の隠者。

※三山五天竺:三山は蓬莱、方丈、瀛洲えいしゅうという仙人が住む東海の山。五天竺は、古代のインドで東西南北中の五つの天竺からなる全体。


○会昌五年(845)、洛陽の作。

○年代が判明している詩の中では、最晩年の部類に属する。

○元気な老人の集いであるけれど、白楽天は本当に楽しかったのだと思う。

 宴会の様子を、しっかりと記録して、後代に残そうなどとは、なかなか考えつかないことだと思う。



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