第241話喜人新年自詠

喜人新年自詠

(時年七十一)


白鬚如雪五朝臣 又入新正第七旬 老過占他藍尾らんび酒 病餘収得到頭身

銷磨しょうま歳月成高位 比類時流是幸人 大暦年中騎竹馬 幾入得見會昌春


新年を迎えたことを喜び、自ら詠ずる。

(この時、七十一歳)


まるで雪のような白い鬚を持つ、五代の帝に仕えた臣である。

そして、この正月は、七十回目となる。

老人であることから、回し飲みした祝いの酒は、最後に飲み干す。

病を得てしまったので、その後は官僚の世界から、完全に身を引いた。

長い年月をかけてたどりついた高い官位ではあるけれど、世間一般の人から見たら、幸せな運を持っていたのだと思う。

かつての大暦の頃に、竹馬に乗って遊んだ子供たちのなかで、どれほどの人が、この会昌の春を見ることができたのだろうか。


※五朝臣:白楽天は、官僚として憲宗、穆宗、敬宗、文宗、武宗に仕えたことになる。

※新正:正月。

※第七旬:七十回目。

藍尾らんび酒:回し飲みで最後に飲み干す酒。元日には年の若い順番に酒を飲み回す。白楽天はその座の最年長であるから、最後を「占」めることになる。

※病餘:病気の後。

※収身:官僚の世界を退く。

※大暦:唐の代宗の時期。(766年から779年)、大暦七年生まれの白楽天の幼年期。


○会昌二年(842)、洛陽の作。

○白楽天は、病気を得て、百日間の病気休暇を形式的に得た後に、完全に引退した。

○長い官僚人生、不遇な時代もあったけれど、満足をしているし、そのうえで長寿も喜んでいる。

○白楽天は、青年期に官僚の老害に反発をしていた。この引退も、その時の考えを自ら守ったのだと思う。

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