第239話杪秋獨夜

杪秋びょうしゅう獨夜


無限少年非我伴 可憐淸夜與誰同 歡娯牢落中心少 親故凋零ちょうれい四面空  

紅葉樹飄風起後 白髮人立月明中 前頭更有蕭條物 老菊衰蘭三兩叢さんりょうそう


孤独な晩秋の夜


若い人など、数えきれないほどいるけれど、私の仲間ではない。

実に、この秋の清らかな夜を、誰とともに過ごせばよいのだろうか・

歓びなどは少なく、心の中も虚しいばかり。

かつての親しい友はすでに故人、まわりを見回しても誰もいない。

紅葉した樹が翻り、風が吹いた後、月明かりの下に、この白髪の人が立つ。

眼の前には、寂しさを増した風景が広がっている。

菊は枯れ、蘭は萎れている。

そんな植え込みが、二つ三つ。


杪秋びょうしゅう:晩秋。

※牢落:寂しい様子。

※中心:胸の内。


○開成三年(838)、洛陽の作。

○晩秋の素晴らしく風情のある夜というのに、親しく深い話ができた友人たちは、全て故人。目に見えるのは、枯れた菊と萎れた蘭。

○風景の寂しさは、白楽天自身の心の寂しさを、より増しているのだろうか。


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