第235話六十六

六十六


病知心力減 老覚光陰速 五十八歸來 今年六十六

鬢絲びんし千萬白 池草八九緑 童稚盡成人 園林半喬木

看山倚高石 引水穿深竹 雖有潺湲せんかん聲 至今聽未足


六十六歳


病を得て、心身の衰えを自覚した。

老いてみると、時の経過を速く感じる。

洛陽に帰ってきたのは五十八歳。

そして今は六十六歳。

髪の糸筋は、数えようがないほど真っ白となり、

池のまわりの草は、八たび九たび緑に変わった。

幼かった子供たちは、みな大人に成長した。

庭園に植えた木は、半ば高木となった。

高い岩に座って山を眺め、

水を引き入れ、竹林の深みまで通す。

水の音は、サラサラと清らかに、いつまでも聞こえ続け、

今でも、聞き飽きることはない。


※心力:心と身体。

潺湲せんかん:水が流れる音。


○開成二年(837)、洛陽の作。

○洛陽に戻ってきて以来、八年目。

 人や庭園の変化を、感じている。

 

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