第234話酬夢得霜夜對月身懐

夢得ぼうとく霜夜對月身懐


淒清冬夜景 搖落長年情 月帯新霜色 砧和遠雁聲

暖憐爐火近 寒覚袷衣軽 枕上酬佳句 詩成夢不成


夢得ぼうとく殿が霜ふる夜に月を眺め、この私を思って詠んでくれた詩にお応えする。


この寒々とした冬の夜の世界。

老境の私の心は、冷えて枯れていくばかり。

月は新しい霜の色を帯び、砧の音が遠く旅ゆく雁の声と和している。

火の近くの暖かさを愛し、薄い袷に冷たさを感じている。

枕元にて、貴方の見事な詩作にお応えしよう。

詩はできたけれど、夢を結ぶことはできないのですが。



夢得ぼうとく劉禹錫りゅううしゃくの字名。中唐を代表する文人の一人。若い時に失脚して都を追われたため、白楽天との交遊の始まりは遅かった。

元稹亡き後、白楽天は最も親しく交わった。

※搖落:衰落する。

※霜:霜は天空に充満すると考えられたので、「月が霜の色を帯びる」と言う。

※袷:あわせ。裏地はついているけれど、中に綿は入っていない。

※夢不成:夢得ぼうとくを夢に見ることもできない。夢と夢得ぼうとくをかけている。


○開成元年(836)、洛陽の作。

○元稹亡き後、最も親しくなった劉禹錫りゅううしゃくとの詩の応酬の一つ。

 この詩の元になる劉禹錫りゅううしゃくの作は残っていない。

○「月帯新霜色 砧和遠雁聲」この雰囲気は、とても好き。

 冬の夜の表現としては、最上の部類に入ると思います。

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