第219話酔吟

酔吟


酔來忘渇復忘飢 冠帯形骸杳若遣 耳底斎鐘初過後 心頭卯酒未消時

臨風朗詠従人聽 看雪閑行任馬遅 應被衆疑公事慢 従前府尹不吟詩


酔いにまかせて詩を吟じる


酔いが回れば、のどの渇きも空腹も、どこかに消え去っていく。

この身を包む衣冠束帯でさえ、この暗闇で、どこにあるのやら。

耳には斎の鐘が響いたけれど、身体の中には卯時の酒がまだ残っている。

風にあたりながら朗詠し、他人が聞こうと気にはしない。

雪見と称して、ふらりと出かけ、歩みは馬のゆっくりとした足に任せる。

おそらく他者からは、仕事が遅いと気に病まれていると思う。

何しろ、今までの知事様は、詩を吟じるなどはしなかったのだから。


※形骸:外見、身なり

※杳若遣:「杳」は暗くてはっきり見えないこと。「若遣」は無くしてしまったらしい。

※斎鐘:寺で食事の時を告げる鐘。

※卯酒:朝に飲む酒。午前六時ごろ。


○大和六年(832)、洛陽の作。

○大和四年末に、河南尹の長官になっているけれど、つい飲んでしまったのだと思う。最後に部下に申し訳ないと思っているのが、白楽天らしい気がする。

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