第214話池上

池上


嫋嫋涼風動 凄凄寒露零 蘭衰花始白 荷破葉猶青

獨立棲沙鶴 雙飛照水蛍 若爲廖落境 仍値酒初醒


池のほとりにて


さわさわと肌寒い風が流れ、冷たく光る露が寒々と落ちていく。

色が褪せ萎れた蘭の花、そして破れた蓮の花は、その緑だけが面影を残す。

砂に巣くう鶴はただ一羽だけで立ちつくし、二体の蛍は池面にその光を写し飛び交っている。

何とも言えず、もの寂しい世界。

そのうえ、ちょうど酔いも冷めてしまった。


嫋嫋じょうじょう:風が静かに吹く様子。

凄凄せいせい:冷ややかな様子。

廖落りょうらく:もの寂しい様子。


○大和五年(831)、洛陽の作。

○自宅の池のほとりで、秋のもの寂しさを詠んでいる。

 茶の湯の侘び寂びにも繋がる世界を感じる。


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