第213話耳順吟 寄敦詩・夢得

耳順じじゅん吟 寄敦詩とんし夢得ぼうとく


三十四十五慾牽 七十八十百病纏  五十六十卻不惡 恬淡清浄心安然

已過愛貧聲利後 猶在病羸びょうるい昏耄こんぼう前 未無筋力尋山水 尚有心情聽管弦

閑開新酒嘗數盞すうさん 醉憶奮詩吟一篇  敦詩夢得且相勧 不用嫌他耳順年


耳順のうた 崔群、劉禹錫に寄せる


三十代から四十代は、五欲に引き寄せられてしまう。

七十代から八十代は、様々多くの病がまとわりつく。

そう考えると、五十代から六十代が、悪くない。

物事へのこだわりが薄れ、心も清浄で安定している。

名誉とか利益への執着も、已に過去のこと。

そして病気になるとか、ボケてしまうにはまだ早い。

野山を歩く体力はまだ残っているし、管弦に耳を傾ける感情も消えてはいない。

ゆったりとした生活の中で新酒を開けて、数杯口に含む。

酔いが回れば、かつて作った詩を思い出し、一つぐらいは口ずさむ。

崔群、劉禹錫よ、まず第一に君たちに勧めることにする。

耳順の年というものを、嫌がる理由はないということだ。


※耳順:「論語:為政篇」六十にして耳したがうに出てくる言葉。

(六十歳で、 耳にどんな話が聞こえても動揺したり 腹が立つことは なくなる)

※敦詩:崔群の字名。元和二年に白楽天と一緒に翰林学士となり、後に宰相になる。

白楽天の旧友。晩年は白楽天の屋敷の向かいに居を構えるほどの親交があった。

※夢得:劉禹錫の字名。中唐を代表する文人の一人。元稹亡き後に最も親交のあった一人。


○大和五年(831)、洛陽の作。

○六十という年齢の良さを説く。

 まだまだ先のことで、訳者は実感がないけれど、白楽天先生がそこまで言ってくれるのだから、楽しみが残る。

 ただ、そこまで生きていられない場合もあるけれど。

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