第212話哭崔兒

哭崔兒


掌珠一顆兒三歲 鬢雪千茎父六旬 豈料汝先為異物 常憂吾不見成人

悲腸自斷非因劍 啼眼加昏不是塵 懷抱又空天默默 依前重作鄧攸とうゆう


死した崔兒を見て哭く


手のひらの一粒の真珠だったこの子は、三歳。

千本もの雪のような白髪を抱く父は、六十歳。

お前が私より先にこの世を去るとは、考えもしなかった。

そもそも私のほうが先に世を去り、お前の成人した姿を見られないことを常に恐れていたのだから。

身体の奥底から悲しみに染まり、これを切り刻むのに剣など無用だ。

目は涙で腫れてしまい、塵が入らなくても、いっそう目がかすむ。

我が心は、もはや何も考えられない。

天に問いても、その口を閉ざしたまま。

私は、以前と同じ、再び鄧攸とうゆうと同じ状態になってしまった。


※懷抱:心の思い。

鄧攸とうゆう:普時代に戦乱に巻き込まれた鄧攸とうゆうは、「自分はまだ子ができるから」として、我が子を棄てて弟の子だけを連れて避難したけれど、結局自分自身の子には恵まれなかった。


○大和五年(831)、洛陽の作。

○五八歳でやっと跡継ぎの男児が誕生、喜んでいたものの、わずか三歳で失ってしまった。

○親友元稹も死に、また愛児を失う、白楽天の悲痛は計り知れない。

 「もはや何も考えられない」、本当に辛いことなのだと思う。


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