第205話三月三十日作

三月三十日作


今朝三月盡 寂寞春事畢 黄鳥漸無聲 朱櫻新結寶

臨風獨長歎 此歎意非一 半百過九年 艶陽残一日

随年減歓笑 逐日添衰疾 旦遣花下歌 送此杯中物


三月三十日の作


今日をもって、三月は終りとなる。

春の様々な風物が、寂しく消え去っていく。

ウグイスの声はいつのまにか聞こえなくなり、朱い桜が実を結び始めた。

風にまかせて、ひとりで時間をわすれて嘆いてしまう。

この歎きや、物思いは、ただ一つにはとどまらない。

五十の歳を九つも過ぎてしまい、春のひざしは、あと一日を残すだけ。

楽しいことは年を重ねるごとに減り、身体は日ごとに衰えを増していく。

花の下で、まず、歌を歌おうと思う。

そして、この杯の中の物の、肴にしようと思う。


○大和四年(830)、洛陽の作。

○過ぎゆく春への寂しさと、自らの老化を重ねて、嘆いている。

 これで酒と歌がなかったら、どれほど寂しいだろうか。

 白楽天の「ボヤキ」も、なかなか、面白い。

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