第206話慵不能

慵不能


架上非無書 眼慵不能看 匣中こうちゅう亦有琴 手慵不能彈

腰慵不能帯 頭慵不能冠 午後恣情寢 午時隨事餐

一餐終日飽 一寢至夜安 飢寒亦閒事 況乃不飢寒


面倒で何も出来ない。


書架に本が無いということではない。

見るのが面倒で読まないだけだ。

箱の中には琴がある。

手にするのも面倒だから弾くなんてとんでもない。

腰が面倒くさいと言うので、帯をつけることができない。

頭も面倒くさいと言うので、冠をつけることができない。

昼を過ぎれば居眠り放題。

昼ごはんは、適当に食べるだけ。

一度食事を摂れば、一日中腹が減らない。

餓えも寒さも、どうでもよくなった。

そもそも、今のわが身は、餓えや寒さから関係なくなってしまっている。


※慵:おっくう、面倒くさい。

匣中こうちゅう:箱の中。

※隨事:気ままに、適当に。


○大和四年(830)、洛陽の作。

○おっくう、面倒くさいといっても、怠惰ではない。

 心が欲しないことを、あくせくとは行動に移さないのである。

 これはこれで、人の心の理想の一つだと思う。

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