第203話池上篇并序(3)

酒酣琴罷 又命楽童登中島亭 合奏霓裳散序げいしょうさんじょ

聲随風飄 或凝或散 悠揚於竹煙波月ちくえんはげつ之際者久之 

曲未竟而楽天陶然已酔 睡於石上矣

睡起偶詠 非詩非賦  阿亀あき握筆 因題石閒 視其粗成韻章 命爲池上篇云爾


酒もほどよく飲み、琴も置き、少年たちの楽団を中島亭に登らせ、霓裳の曲の全総部分の演奏をさせる。

その妙なる響きは、風にのって漂い、集まってみたり広がってみたり。

竹林に籠って聞いていると、池の揺れる波に浮かぶ月のまわりに、ゆるゆると長く、流れていく。

この楽天は、その曲が終わる前から、陶然となり、とうとう石の上で、眠りに落ちてしまった。

目覚めにふと、口から出てきた言葉は、詩でもなく賦でもない。

阿亀に筆を取らせて、そのまま石の上に書かせてみると、おおよそ韻を踏んでいるので、「池上扁」と名付けることにする。


※霓裳散序:霓裳は霓裳羽衣の曲。長恨歌にも登場する。散序は前奏部分。

阿亀あき:白楽天の甥。

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