第202話池上篇并序(2)

先是潁川えいせん陳孝山ちんこうざん與醸法酒 味甚佳

博陵びゃくりょう崔晦叔さいかいしゅく與琴 韻甚清

蜀客姜發きょうはつ授秋思 聲甚淡

弘農楊貞一ようていいつ與青石三 方長平滑 可以坐臥

大和三年夏 楽天始得請爲太子賓客 分秩於洛下 息躬於池上

凡三任所得 四人所與 洎吾不才身 今率爲池中物矣

毎至池風春 池月秋 水香蓮開之旦 露清鶴唳之夕 

拂楊石 擧陳酒 援崔琴 弾姜秋思 頽然たいぜん自適 不知其他



以前に、潁川の陳孝山が、本格的な酒を醸してくれた。

そして、その味は、本当に素晴らしいものだ。

博陵の崔晦叔からは、琴をいただいた。

その音色は、本当に清らかだ。

蜀の人、姜發からは、秋思の曲を伝授された。

そして、その曲は淡く響き渡る。

弘農の楊貞一からは、青い石を三ついただいた。

その石は平らな長方形にして、なめらかである。

座ることも、臥せることも可能である。


大和三年の夏に、白楽天は初めて太子賓客の任を希望し、洛陽に分司することになった。

そして、池のほとりで、この身を休めることになった。

およそ三つの旧任地にて手に入れた物と、四人にからいただいた物、そして、この私という才能に欠けた人物、全てがこの池の中の物となった。

池に風が渡る春、池に月が映る秋、池の蓮が開き湖面に香りが漂う朝、露が清らかで鶴が鳴く夕べ、そういう時には常に楊氏の石をサッと掃き、陳氏からの酒を飲み、崔氏からの琴を手に、姜氏からの「秋思」の曲を弾く。

そして、甚だ上機嫌に酔い、他の何事も考えなくなる。


※法酒:本格的な酒。

頽然たいぜん:ほぼ酩酊状態。




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