第201話池上篇幷序(1)

池上篇幷序


都城風土水木之勝 在東南偏

東南之勝 在履道里

里之勝 在西北隅。

西閈北垣第一第 即白氏叟楽天退老之地

地方十七畝 屋室三之一 水五之一 竹九之一 而島樹橋道閒

初楽天既爲主 喜且曰 雖有臺池 無粟不能守也 乃作池東粟廩ぞくりん

亦曰 雖有子弟 無書不能訓也 乃作池北書庫

又曰 雖有寶朋ひんぽう 無琴酒不能娯也 乃作池西琴亭 加石樽焉

楽天罷杭州刺史時 得天竺石一 華亭鶴二以歸

始作西平橋 開環池路 

罷蘇州刺史時 得太湖石 白蓮 折腰菱せつようりょう 青版舫せいはんぼう以歸

又作中高橋 通三島徑

罷刑部侍郎時 有粟千斛 書一車 洎臧獲ぞうかく之習筦磬弦歌かんげんげいか者 指百以歸


池上篇 並びに序


この洛陽の都における景勝地は、東南の隅にある。

そして、その東南の隅における景勝地は、履道里である。

履道里における景勝地は、その西北隅にある。

西と北に垣根を設け、まず目に入ってくる邸宅は、かの楽天の隠居の地である。

その土地の面積は、十七畝。

構成としては、お屋敷が三分の一。水が五分の一。竹林が九分の一。それ以外は島や木々、橋や道が占めている。

楽天は、ここの主となった当初、笑いながら語った。

「楼台や池があったとしても、穀物がなければ生活を維持できないではないか」

そういうことなので、池の東に穀物庫を建てた。

白楽天は、また語った。

「子弟がいるにしても、書物がなければ、教育の術がないではないか」

そういうことなので、池の北に書庫を建てた。

白楽天はまた語った。

「客人や友人が訪ねてきても、琴や酒がなければ、楽しめないではないか」

そういうことなので、池の西に琴亭を建て、石の酒樽を添えた。

楽天は杭州刺史を罷める時に、天竺の石を一つ、華亭の鶴を二羽を持ち帰った。

そして、まず西平橋を作り、池を廻る道を作った。

また白楽天は蘇州刺史を罷める時に、太湖石、白蓮、折腰菱、青版船を入手し、持ち帰った。

そしてさらに、中高橋を作り、三つの島の道を通した。

刑部侍郎を罷めた時には、千斛の穀物に車一台の書籍に加えて、楽器や歌に習熟した使用人百人を連れ帰ったのである。


※都城:ここでは洛陽のこと。

※十七畝:唐代の一畝は、5・8アール。ほぼ三千坪の屋敷になる。

折腰菱せつようりょう:蘇州特産のヒシの一種と想定される。

青版舫せいはんぼう:舳先に青い雀を飾った船。

臧獲ぞうかく:使用人、奴婢。

筦磬弦歌かんげんげいか:管弦打楽器及び歌手。

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