第198話問江南物

問江南物


歸來未及問生涯 先問江南物在耶 引手摩挲まさ青石笋せいせきしゅん 回頭點檢白蓮花

蘇州舫故龍頭暗 王尹橋傾雁齒がんし斜 別有夜深惆悵ちゅうちょう事 月明雙鶴在裴家



江南から持ち帰った物を確認する。


洛陽の屋敷に戻ってきて、生活の様子を確認する前に、江南から持ち帰った物を確認する。

青い石でできた筍を手にとってなでたり、首をあちこち回して白蓮の花を確認する。

蘇州の舟は古びてしまい、舳先の色が褪せてしまった。

王尹が作ったごとくに洛陽の橋は斜めに傾き、その階段も斜めになっている。

それ以上にがっかりしたのは、この明月の夜に、私の二羽の鶴が裴様にお屋敷にいることだ。


※生涯:生活、生計の意味。

摩挲まさ:なでさすること。

青石笋せいせきしゅん:青い色をした筍のように長い石。

※王尹:洛陽の長官にして昔からの友人。洛陽市内に橋を造営した。

 白楽天の屋敷の中にも、池と池にかける橋を王尹のスタイルでかけたようだ。

雁齒がんし:一段ずつ、雁の列のように斜行、歯のように整然と並ぶ。

※雙鶴在裴家:江南から連れ帰った二羽の鶴を、宰相の裴氏に贈り物として捧げた。


○大和三年(829),洛陽の作。

○かつての任地である蘇州から持ち帰った品々を、まず確認する。

 多少は状態が悪くなっている物もあるし、宰相に献上した二羽の鶴を惜しんでいる。

 橋の句は、友人にして洛陽の長官王尹が、洛陽市内に造営した橋を真似て、白楽天の屋敷の中の池に掛けたのだろうか。

 斜めで整列した階段があることから、屋敷内の池に掛ける橋の階段としては太鼓橋のような形で、大きな橋かもしれない。

 そうなると、池も大きく、それがある屋敷も大邸宅なのだと想像される。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る