第197話歸履道宅
歸履道宅
驛吏引籐輿 家童開竹扉 往時多暫住 今日是長歸
眼下有衣食 耳邊無是非 不論貧與富 飲水亦應肥
履道の屋敷に還る。
宿場の係が藤の輿を屋敷に引き入れ、わが屋敷の使用人が竹の扉を開ける。
以前は短い間だけこの屋敷にいたけれど、今日からはかなり長い間となる。
見渡してみれば、衣食は十分に足りているし、不平不満の文句も耳に入ってこない。
貧しいとか富貴であるとか、何も議論の対象にはならない。
この状態では、水を飲んでも肥ってしまうに違いない。
※履道宅:洛陽、履道里の自分の屋敷。白楽天が長く余生を過ごした屋敷。
※驛吏:宿場の係。宿場で藤の輿を調達して帰宅した。
○大和三年(829)、洛陽の作。
○様々な地で過ごした白楽天は、洛陽の自分の屋敷に戻ってきた。
そして、ここの大邸宅にて、悠々自適の暮らしを始めることになる。
いろいろな経験を積んできただけに、安堵感に満ちている。
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