第195話中隠
中隠
大隠住朝市 小隠入
不如作中隠 隠在留司官 似出復似処 非忙復非閑
不労心与力 又免飢与寒 終歳無公事 随月有俸銭
君若好登臨 城南有秋山 君若愛遊蕩 城東有春園
君若欲一酔 時出赴
君若欲高臥 但自深掩関 亦無車馬客 造次到門前
人生処一世 其道難両全 賤即苦
唯此中隠士 致身吉且安 窮通与豊約 正在四者間
大隠は町の中に住み、小隠は山の中に住む。
山の中は寒々として寂しく、町の中では喧騒に包まれてしまう。
中隠となって、分司東都などの名誉職でいるほうが良い。
出仕とも言えるし、隠棲とも言える。
忙しさは感じず、暇を持て余すということもない。
精神的にも体力的にも、まるで負担などはなく、衣食に困ることがない。
年間を通して役所の仕事はないけれど、俸給は毎月与えられる。
あなたが山歩きに興味があるならば、町の南方に秋の山がある。
あなたが行楽が好きであるならば、町の南方に春の公園がある。
あなたが、仮に酒を楽しみたいならば、たまには宴席で出向けば良い。
何しろこの洛中には、君子が数多いし、いくらでも楽しく話ができる。
あなたがのんびりと一休みしたいのならば、自分でしっかりと門を閉ざせばよいだけのこと。
そうすれば馬車に乗った客人が、むやみに門前に来ることもない。
人間はその一生において、肉体と精神の両方を満足させることは、なかなか難しい。
貧しい身であれば、餓えや寒さで肉体を苦しめるし、身分高く裕福になれば、それを保持するなどの精神的な辛さがある。
そうなると、この中陰のような人だけが、幸いが多くて気楽な状態なのだと思う。
卑賤と栄達、富裕と貧困、実にこの四つの中間に存在しているのである。
※大隠・小隠:普、王康琚「小隠は陵沢に隠れ大隠は朝市に隠る」から。
「朝市」は朝廷、市場、世俗。
王康琚自身は町の中に住む隠者こそが素晴らしいとして大隠とした。
※冷落:寂しい様子。
※
※留司官:東都洛陽詰めの官職。ほぼ名誉職であること。
※
※造次:軽々しく、気ままに。むやみにと訳しました。
○大和三年(829)、洛陽の作。
○自ら求めた洛陽の大邸宅の中で過ごし、仕事はほぼないけれど、俸給は高く毎月入ってくる。やかましくもなく、さびしくもない、悠々自適状態である。
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