第194話綬太子賓客歸洛
綬太子賓客歸洛
自此後東都作
南省去拂衣 東都來掩扉 病將労齊至 心與身同歸
白首外縁少 紅塵前事非 懐哉紫柴叟 千載心相依
太子賓客を授けられ、洛陽に帰った。
これから後は、東都洛陽での作となる。
南省を去り衣の塵を払い落とし、東都洛陽に帰り扉を閉ざした。
病は老いと共に進み、心と身体も一緒に帰ってきた。
この白髪の老人は、今や世間との関係には、ほとんど縛られない。
俗世の塵まみれの過去は、本来の私には向かなかった。
そして今は、商山に篭り、紫芝を歌った翁たちを、遠く夢見る。
千年の隔てを越えて、我が心は彼らに寄り添っている。
※太子賓客:白楽天は大和三年、刑部侍郎を辞し、太子賓客分司東都に任ぜられた。
高位官僚を歴任した者への、名誉職、仕事の実態はほとんどない。
※南省:尚書省。刑部は尚書省に属する。
※拂衣:世塵を払い落とす。帰隠のこと。
※紅塵:仏教用語で、俗世。
※外縁:外部との関わり、これも仏教用語.
※紫柴叟:秦の時代に暴政を避けて商山に籠もった四人の賢人を指す。紫柴は仙人の草。その四人の賢人は仙人の草を食して餓えを癒やしたとの故事がある。
○大和三年(829)、洛陽の作。
○白楽天はかねてから憧れていた、楽隠居の生活に入った。
心はほぼ、仙人の世界なのか。
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