第191話和春深二十首 其十二

和春深二十首 其十二


何處春深好 春深漁父家 松湾随棹月 桃浦落船花

投餌移軽楫 牽綸軸小車 蕭蕭蘆葉裏 風起釣絲斜


春が深まるのが素晴らしいとは、どこの場所を言うのか。

漁夫の家でも、春は深まる。

松の入江から漕ぎ出した舟に月が寄り添い

桃の岸辺を進めば花が舟に散り落ちる。

小舟を移して餌を投げ

リールを回して糸をたぐる。

アシの茂みはカサカサと音を立て

吹く風が釣り糸を傾ける。


○大和三年(829)、長安の作。

○春の夜釣。松、月、桃、花、舟・・・風情あふれる世界を淡麗に詠んでいる。


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